アクションもすごい活劇も展開して大満足!
『化け猫あんずちゃん』はほのぼのとした日常描写や、ダメ中年と孤独な少女が出会ってこその「ほんのちょっぴりの成長物語」が大きな魅力というわけですが、さらに終盤の「アクションの大見せ場」も大きな魅力です。 本作でキャラクターの動きを描いたのは、『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』で知られるほか、直近では2023年のアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』も絶賛された日本のスタジオ・シンエイ動画(背景美術と色彩を担ったのはフランスのMiyu Productions)。終盤のアクションの迫力はそのものずばり、『劇場版クレヨンしんちゃん』の躍動感を連想させました。 そして、その活劇があってこそ、「死んだ母親に会いたい」と願うかりんの年相応の寂しさや健気さも、より強く伝わるようになっています。大切な人を亡くしてしまった「喪失感」に向き合う物語にはとてつもない優しさを感じましたし、それをもってのかりんの「選択」にも大きな感動があったのです。『化け猫あんずちゃん』は、全体的にはいい意味で「ゆるい」雰囲気があり、それこそが心地良い作品です。同時に、何気ないセリフや行動が伏線として回収されたりする、実は計算し尽くされた物語になっていることも称賛するしかありません。94分と上映時間は短めながら、その全ての瞬間がいとおしいとさえ思えました。 最後に余談ですが、本作はやはりロトスコープによる「もともとは実写だけど、かわいらしくて親しみやすいアニメに落とし込まれた俳優たちの演技」が大きな魅力。あんずちゃん役の森山未來、かりん役の五藤希愛が素晴らしい表現力を見せていることはもちろん、他の豪華俳優陣の実写からアニメへの「変わりっぷり(または印象そのまま)」もまた楽しいのです。
そのキャスティングをあらかじめ知って見てももちろんいいですが、知らないまま見て鑑賞後に「あのキャラってあの人だったんだ!」と驚いてみるのも、いいかもしれませんよ。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。