7:『望み』(2020年)
同名小説の映画化作品で、高校生の息子が行方不明になった矢先に、その同級生が殺害されたニュースが流れ、家族は誹謗中傷やマスコミにさらされ、息子を疑い出さざるを得なくなる……という「逃げ場のない生き地獄映画」に追い込まれるサスペンスです。劇中の「どっちに転んでも最悪」という言葉の重さを、これでもかと思い知らされるでしょう。
堤真一、石田ゆり子、岡田健史(現・水上恒司)と主要キャストみんな素晴らしく、特に「兄が殺人事件の犯人と疑われる」苛烈かつ複雑な心境を表現した清原果耶を誰もが褒め称えるのではないでしょうか。「絵に描いたような理想の家族」をイメージした美術とセットも秀逸ですし、観客の心理をとことん揺さぶる過程、そして最終的に家族に突きつけられるジャッジが「下手なホラー映画よりも怖い」作品としておすすめします。
8:『子供はわかってあげない』(2021年)
失踪を発端とする物語はいい意味でつらく苦しい内容が多いので、ほっこりできる作品も紹介しておきましょう。同名漫画の実写映画化作品で、ジャンルはミステリーというよりも、「少女が幼い頃にいなくなった実の父に会いに行くひと夏の冒険」をみずみずしく描いた青春ドラマ。何よりの魅力は主演の上白石萌歌で、アニメファンの男の子と知り合って心からうれしそうだったり、時には水泳に一生懸命になったりと、とにかくかわいいのです。
冒頭から映し出される“萌え萌え”なアニメが、豪華な声優陣かつ「ガチ」なクオリティによって作られているのも重要で、おかげで自称「アニヲタ」の主人公をさらに応援したくなりました。細田佳央太、豊川悦司、千葉雄大などキャスト陣がとってもかわいらしく、『南極料理人』や『横道世之介』の沖田修一監督ならではの、登場人物のほのぼのとしたやりとりにクスクス笑えるコメディードラマとしてもおすすめです。