ヒナタカの雑食系映画論 第67回

『哀れなるものたち』の18禁指定に納得の理由。『タイタニック』『バービー』も連想する作品の意義とは

アカデミー賞に11部門ノミネートされ、最多受賞の有力候補となっている『哀れなるものたち』。R18+に納得の理由、さらに『タイタニック』『バービー』などの名作に通ずるメッセージ性や意義を解説します。サムネイル画像出典:(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

哀れなる者たち
『哀れなるものたち』 1月26日(金)公開 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン (C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2024年1月26日に日本で公開となる『哀れなるものたち』。第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金獅子賞に輝き、第81回ゴールデングローブ賞では作品賞と主演女優賞を受賞。さらに、批評サービスのIMDbでは8.4点、RottenTomatoesでは批評家支持率94%を記録するなど、世界ではすでに大絶賛で迎えられています(各評価は執筆時点のもの)。

アカデミー賞11部門ノミネート、そしてR18+指定

そして、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、撮影賞など11部門にノミネート。13部門にノミネートし、3月29日に日本公開も決定した『オッペンハイマー』に次ぐ、最多受賞の有力候補となっています。

筆者個人としても、この『哀れなるものたち』は早くも2024年のベスト候補。アバンギャルドな内容でありつつも、衣装や音楽など全方位的に完成度が高く、現代に作られた意義も大きく、何よりエンターテインメントとしてものすごく面白いことを称賛したいです。
 

ただし、注意していただきたいのは、極めて刺激の強い性愛描写がみられるためにR18+指定がされているということ。「脳みそがはっきり見える」かたちでグロテスクなシーンもありますし、「18禁が大納得できる内容」であることを前提にして見に行くことを、何よりもおすすめします。映画『タイタニック』や『バービー』を連想させる理由も含め、さらなる魅力を紹介しておきましょう。

『フランケンシュタイン』の発展形のようなあらすじ

あらすじは「女性が世界を自分の目で見るべくヨーロッパ大陸横断の旅に出る」という、極めてシンプルといっていいもの。しかし、主人公・ベラの設定が奇抜です。彼女は入水自殺を図っていたものの、エキセントリックな天才科学者の手により蘇生します。その方法は、「自身がみごもっていた胎児の脳の移植」というとんでもないものだったのです。
哀れなる者たち
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
この流れはゴシック小説および映画『フランケンシュタイン(の怪物)』のパロディ、またはその発展形です。『フランケンシュタイン』で怪物は生みの親である博士に襲いかかるのですが、この『哀れなるものたち』では復讐(ふくしゅう)などではなく、ただ自由奔放な旅に出ようとするのですから。主人公ではなく、博士(天才科学者)のほうの顔に縫い合わせた傷跡があるのも『フランケンシュタイン』を意識しているのでしょう。

そして、「大人の体を持つ」ものの「頭は子ども」の女性を全身全霊で体現したエマ・ストーンの素晴らしさは筆舌に尽くし難いものがあります。過激な性描写はもとより、初めこそ制御不能の気まぐれさを持つ子どもに思えたものの、とあるショッキングな事実を知ってからの、主体的な意志を持つ女性へと成長していく様をも、見事に表現していたのですから。

ちなみに、『フランケンシュタイン』の作者であるメアリー・シェリーは、互いの才能に惹かれあった男性と駆け落ちをしており、それが後述もする『哀れなるものたち』における男性と共に旅をする物語にリンクしている(あるいは相反している)ようにも思えます。そのメアリー・シェリーの伝記映画『メアリーの総て』を併せて見てみるのもいいでしょう。
 

さらに、そのメアリー・シェリーを主人公とし、女性たちの連帯をアクション活劇も交えて描いた日本の漫画作品『黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ』(講談社)もとてつもなく面白いので、こちらもおすすめしておきます。
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