5:『千夜、一夜』(2022年)
年間約8万人に及ぶ「失踪者リスト」から発想した映画で、「北の離島の港町で30年も夫を待ち続けた女性が、2年前から失踪した夫を探す女性と出会う」ことから始まる物語です。心にズシンと来るのは、それぞれの言葉の重さ。「理由が欲しいんです。彼がいなくなった理由。自分の中で何か決着がつけられればって」というセリフに共感する人は多いでしょう。
そのように2年の失踪から「踏ん切りをつけようとする」意志が告げられる一方で、「帰ってこない理由なんかないと思ってたけど、帰ってくる理由もないのかもしれない」「みんな何も言わずにいなくなってしまう」という悲しい言葉も告げられます。30年という長い長い時の流れを残酷にも感じられるからこそ、「失踪した人とどう向き合っていくのか」を究極的に考えられる作品です。
6:『さがす』(2022年)
ネタバレ厳禁というよりも、「父が失踪する話」以外の予備知識を入れずに見てほしいと、心から願いたくなる内容です。序盤に感じていたとある「違和感」が、「こんなところ」に行き着くとは思ってもみなかった、予想の斜め上を行く事態の数々に翻弄(ほんろう)されてほしいのです。
いい意味でろくでなしのようで憎めなさも同居している佐藤二朗、いつも不機嫌なようで朗らかさもある伊東蒼、底しれない危うさと狂気を秘めた清水尋也と、俳優それぞれの熱演もたまらないものがあります。PG12指定ならではの意図的な不快感を抱かせるシーンがあるものの、一瞬たりとも飽きせないエンターテインメント性も存分な、刺激的な内容を求める人には大プッシュでおすすめします。