3:『アンダーカレント』(2023年)
漫画の映画化作品で、あらすじは「夫の失踪後に銭湯を再開した女性と、謎めいた男性が共同生活を始める」というもの。主人公はうさんくさい探偵に夫の捜索を依頼し、観客はその過程で彼女の辛い過去も知っていくことになります。こちらも「間」を長く撮った会話が主体で、それぞれの感情を主体的に読み取る面白さに満ちています。
劇中では「人を分かるって、どういうことですか?」という問いかけがあり、それはタイトル『アンダーカレント』さながらの、表面上では分からない「下流」にある他人の気持ちを(たとえ明確な答えが出なかったとしても)「分かろうとする」行動へとつながっているようにも思えます。
今泉力哉監督は劇場パンフレットで「人を傷つけることがあるかもしれなくても、正直になにかを伝えること」が原作のテーマであると語っており、それを誠実に引き継ぎつつ、独自の余韻を残すラストシーンを作り上げたことも称賛したいです。その今泉監督が新たに漫画の実写化を手掛けた、3月放送のドラマおよび5月31日公開の映画『からかい上手の高木さん』も楽しみです。
4:『サーチ2』(2023年)
「本編の全てがパソコンの画面上で展開する」特徴と完成度の高さで話題となった2018年公開の『search サーチ』の続編。しかし、物語は独立しているので今回から見ても問題なく楽しめます。行方不明の母を探す主人公は「デジタルネイティブ世代」で、スマートフォンとパソコンおよびSNSを駆使して情報を集める様にワクワクするでしょう。
さらに、相棒となるのが「代行サービス業をしていた中年男性」というのも大きな魅力。今まで縁もゆかりもなかった、利発な18歳の女性と、何から何までダメそうなおじさんが、離れた場所でも一蓮托生(いちれんたくしょう)な関係になる、「年齢も性別も今いる場所も異なる2人のバディムービー」としても楽しめるのです。クライマックスでは思わず叫んでしまいそうなほど、恐ろしく衝撃的な展開が待っていますよ。