AIに負けない子の育て方 第8回

市役所、銀行、大学まである…1日限りの”仮想の街”が美しが丘公園に出現! 横浜市発のキッズタウン

さまざまな職業体験や市民体験を通して、社会のしくみを学ぶことができる体験型のイベント、キッズタウン。その特徴は、どんなイベントにしていくのかを子どもたちが話し合い、自ら作り上げていくこと。横浜市青葉区で行われている取り組みを取材しました。

連載「AIに負けない子の育て方」
子育ては人材育成の一大プロジェクト。今の時代に必要な「AI時代を生き抜く大人に育てる」ための子育ての考え方やHOW TOを、数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリスト・中曽根陽子が、独自取材やコラムでつづる。偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びにシフトしませんか?

子どもが主体となって仮想の街を作る「キッズタウン」とは

キッズタウンという取り組みをご存じでしょうか?

「こどものまち」とも呼ばれていますが、ドイツのミュンヘン市で1979年から開催されている「ミニ・ミュンヘン」をもとに、日本でも活動が広がっています。

ミニ・ミュンヘンは7歳から15歳までの子どもだけが運営する「小さな都市」で、8月の夏休み期間3週間だけ誕生する仮設都市です。ドイツの子どもたちにとって最も有名な文化教育プロジェクトの1つで、国内外の300を超える都市で取り入れられています。
 
キッズタウンは、さまざまな職業体験や市民体験を通して、社会のしくみを学ぶことができる体験型のイベントですが、大きな特徴は「子どもが主体」ということ。

日本でも130くらいあるといわれていて、子どもが主体となって職業体験や市民体験ができる仮想の街をつくるイベントが全国で展開されています。

ちっちゃい人と作る街「チッチェーノ・チッタ」

今回はその1つ、横浜市青葉区で開催される、「CICCENO-CITTA(チッチェーノ・チッタ)」を紹介しましょう。
 
チッチェーノ・チッタは、ちっちゃい人とつくる街という意味。

その始まりは、2017年、地元で開催された、チッチェーノの原型ともいえる「みらまち」というイベントの運営に携わった地元のママ2人の「楽しかったね。でもこれで終わりになるのは残念だ。じゃあ自分たちでやってみようか」というやりとりからでした。

その2人が、鈴木美由紀さんと藤好つむぎさんです。

主催の2人(左:鈴木美由紀さん、右:藤好つむぎさん)
主催の2人(左:鈴木美由紀さん、右:藤好つむぎさん)

2人とも、商売の経験があることから、「仕事や商売を中心とした街」というコンセプトで、「子どもによる起業・起案」と「当日参加する仕事体験」の両方を兼ね備えたイベントを企画しました。

子どもを子ども扱いしない“リアル”を追求した街

イベントといっても、子どもを楽しませるためのものではありません。お店や会社を出店する子、街全体の運営に携わる子、当日市民として街に遊びに来てお仕事体験をする子、そして子どもたちと一緒に街を作ってくれるたくさんの大人出店者やボランティアの人たちが、一緒になって1日限りの仮想の街を作ります。

「お店をやってみたい」「街づくりに興味がある」という子どもたちが集まって、子ども会議を開き、ゼロから話し合うことからその活動は始まりました。

チッチェーノ・チッタでは、大人が用意したものをただ子どもが体験するのではなく、どんなイベントにしていくのかを子ども会議で話し合い、自ら作り上げていきます。なので、関わる大人は、子どもを子ども扱いせず、企画も運営もできるだけ口を出しません。

その理由を、「ごっこ遊びではないので、子どもたちにはちゃんと考えてほしかったし、たとえ失敗しても、それを経て工夫することが大切です。お仕事体験も同じで、大人の出店者さんには、子どもたちにリアルな仕事体験してもらうように、子ども向けにアレンジするのではなく、できる限りその仕事・役割そのものの面白さや難しさが伝わる形で参加していただきたいとお願いしました」と美由紀さん。
 
これはミニ・ミュンヘンの考え方と同じですが、2人はそのことを知って始めたというより、最初からそういう思いがあったそうです。

というのも、美由紀さんは小学校の時に、サンリオショップを経営をしていたお母さんから、子ども向け商品の仕入れを任されるという経験をされていて、自分好みのものばかり仕入れて、売れ残ってしまった苦い経験もあったとか。

でもそんな失敗があったから、そこから周りの子どもが何に興味を持っているのかに目を向けるようになり、天気や季節を気にする、お客さまの視点に立って考える、そんな「商売の基本」を知ったそうです。

でも、今の子どもたちには、なかなかそういう経験をする場所がない。気軽にネットで買えてしまう時代だからこそ、対面の商売のやり方を経験する中で、失敗も含めていろんなことをリアルに感じ取ってほしい。そんな思いが、美由紀さんの根っこにあったのです。

また、つむぎさんも、飲食業に関わる中で、中学生の職業体験の受け入れをしていた時、それがその日限りのゲストになってしまうことに違和感を覚えていたそうです。「ちまたには○○体験があふれていて、やった気になってしまうことが多い気がして、子どもたちにはぜひリアルな、職業体験をしてほしいと考えていた」と言います。

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それ、どうやって実現する? 子ども会議では事業計画書も作成
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