まるで本物の街。チッチェーノ・チッタのお金と仕事の仕組み
子どもたちはまず市役所で市民登録をしてから、ハローワークで仕事を探します。仕事を終えると銀行で給与(チッタ)を受け取り、その10%を税務署に納付。稼いだチッタは、街のお店で使うことができます。他の仕事をやりたい子どもは、またハローワークに行って仕事を探します。
「うれしさが忘れられなかった」複数回参加している小学生も
過去のチッチェーノ・チッタに3回ほど参加し、今回も出店する小学5年生のお子さんが、以下のようなコメントを寄せてくれました。
私が初めてチッチェーノ・チッタに参加したのは二年生の時です。お金のやりとりから商品作りまで、なにもかも初めてで最初は少し怖かったです。だけどがんばってお店作りを進めていくうちにどんどん楽しくなっていきました。
当日は多くのお客さんが来てくれました。自分の作った商品が少しづつだけど、売れていったのでとてもうれしかったです。お母さんにだだをこねて買ってくれた人がいたときはなおさら。
うれしかったこともたくさんあったけど、もちろん大変だったこともあります。特に大変だったのは、原価計算をしていくらで売るかを考えることです。もうけは多い方がいいけれど、高いとお客さんが買ってくれないかもしれない――。何度もスタッフさんにアドバイスを貰いました。でも慣れれば平気です。
二回目は買ってもらったときのうれしさが忘れられなかったので参加しました。今回の三回目の参加の理由も同じです。そして今回は今までと同じ商品をパワーアップさせて売ります。色とりどりのレースリボンのヘアゴム、花形のビーズアクセサリーなど。
「大事に使いたい」と思ってもらえるような商品を作りたいです!みなさん是非きてください。
6年前に参加した子どもたちは高校生や大学生になり、まちづくりのプロジェクトに参加したり、将来を考える時にチッチェーノ・チッタでの経験を思い出していると言ってくれたり、デッケーノボランティアとして協力してくれる人も出てきました。
最後に「いつかチッチェーノ・チッタの参加者だったこどもたちが、主催を引き継いでくれることが私たちの夢」という美由紀さんに、この活動を通して感じていること、伝えたいことを聞きました。
物事は体験したことからしか分かりません。この活動を通して、自分自身も多くのことも学び、地域とのつながりもできました。
子どもたちが、この活動を通して何か学んでもらいたいし、親たちにはそんな子どもたちから何か感じてもらえたら嬉しいです。(美由紀さん)
子どもたちのためとやっていることが、自分自身の糧にもなっているのですね。
正解らしきものがすぐに与えられるAI時代だからこそ、自分で考え行動する力が必要ですが、それは小さい時からリアルな体験を通して試行錯誤する中で育まれていくのでしょう。
子どもたちの可能性は計り知れません。大人は、その力を引き出す存在であればいいのだと、取材を通して思いました。
出店希望は締め切りましたが、当日のお仕事体験は2月3日から募集を開始しています。初日で100人のお申し込みがあったそうです。気になる方はお早めに。
この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。