3:『マチルダ・ザ・ミュージカル』(2022年)
『チャーリーとチョコレート工場の秘密』で知られるロアルド・ダール原作のNetflix配信作品です。子どもも見られるファミリームービーではあるのですが……主人公の少女マチルダの境遇が思いのほか過酷! 両親は儲け話ばかりに熱中していてマチルダの気持ちを聞こうともせず、さらに入学した学校は意地悪な校長が支配する刑務所のような場所だったのですから。最悪の環境でも、聡明かつ特殊な能力を持つマチルダと、個性豊かな子どもたちの戦いを通じて、「子どもの自由意志」を肯定する物語といっていいでしょう。マチルダが語る創作の物語や、抑圧的な生き方を強いられた先生のドラマも重要な意味を持っています。大勢の子どもたちによる、バラエティ豊かな歌唱とダンスも圧巻です。
4:『アネット』(2022年)
夫婦と子どもの愛憎劇が描かれる作品。何よりの特徴はアダム・ドライバー演じるスタンダップ・コメディアンの夫が(もちろんいい意味で)最低最悪だということでしょう。キャリアが落ち目になると、一流のソプラノ歌手である妻との格差に悩み、ふてくされ、私生活でも行きすぎた傲慢(ごうまん)さを見せていくのですから。アメリカの兄弟バンドのスパークスが手掛けた、ダークテイストのロックミュージックにマッチした、まるで悪夢を見ているかのような演出も大きな見どころ。生まれてくる子どもの「ある表現」には「えっ?」と驚く人がほとんどでしょうが、最後まで見届ければ確かな意義があると納得できるはず。難解とされがちなレオス・カラックス監督作の中では最も分かりやすい内容なので、入門編としてもおすすめです。