ヒナタカの雑食系映画論 第68回

『ラ・ラ・ランド』だけじゃない! 歌と音楽、何よりエンタメ性に優れた「最新ミュージカル映画」10選

2021年から2024年までに公開または配信された、おすすめのミュージカル映画を10作品紹介します。画像出典:(C)2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

5:『シラノ』(2022年)

17世紀フランスに実在した剣豪作家を主人公にした戯曲の再映画化で、外見に自信が持てない男が、恋敵のはずの青年と想い人が添い遂げられるように、恋文を代筆するという切ない物語が展開します。戦争時に「手紙の代筆」を主軸とした物語がつむがれる様は、日本のアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(TOKYO MXほか)も連想しました。

歌うシーンが少なめの「ミュージカルしすぎていない」バランスは、むしろ受け入れやすいという人もいるでしょう。それでいて、小人症の俳優ピーター・ディンクレイジの哀愁が漂う存在感と演技力、声の良さも存分に堪能できるはずです。『つぐない』や『PAN ネバーランド、夢のはじまり』などのジョー・ライト監督らしい美麗な画と、贖罪(しょくざい)を描く作家性も貫かれていました。

6:『ウエスト・サイド・ストーリー』(2022年)

ブロードウェイミュージカル『ウエストサイド物語』をスティーブン・スピルバーグが再映画化。描かれるのは、移民が増える中で人種差別や貧困の問題が深刻化し、若者たちのチームの対立が激化する中でのラブストーリー。物語が悲劇的な方向へと進むからこそ、明るいミュージカルの雰囲気および歌詞とのギャップが、より感情を揺さぶる内容にもなっています。

大胆なカメラワークや編集で演出されたダンスシーンはとてつもなくエネルギッシュで、世界トップクラスのスタッフとキャストによるミュージカルシーンそれぞれが「極上」の完成度。イチオシはアップテンポでキャッチーなダンスナンバー『America』。劇中で移民への差別や偏見が容赦なく描かれるからこそ、異なる場所で育った人々が集う場所への希望を託した歌詞に注目してほしいです。
次ページ
今だからこそ胸に響く「死」へのメッセージ
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    静岡の名所をぐるり。東海道新幹線と在来線で巡る、「富士山」絶景ビュースポットの旅

  • ヒナタカの雑食系映画論

    『グラディエーターII』が「理想的な続編」になった5つのポイントを解説。一方で批判の声も上がる理由

  • アラサーが考える恋愛とお金

    「友人はマイホーム。私は家賃8万円の狭い1K」仕事でも“板挟み”、友達の幸せを喜べないアラサーの闇

  • AIに負けない子の育て方

    「お得校」の中身に変化! 入り口偏差値と大学合格実績を比べるのはもう古い【最新中学受験事情】