ここでは、最新作を含む、2021~2024年までに公開(配信)されたミュージカル映画から、厳選して10作品を紹介しましょう。いずれも楽曲そのものの魅力のみならず、物語とシンクロした、感情をダイレクトに伝える歌詞にも注目してほしいです。
1:『カラーパープル』(2024年2月9日より劇場公開)
同名小説を原作とした1985年のスティーブン・スピルバーグ監督作品のリメイクです。主人公は映画の序盤から横暴な父に虐待され、10代で望まぬ結婚を強いられ、唯一の心の支えである妹とも離れ離れになると、不幸が重なる状況に追いやられます。しかし、型破りな生き方をする2人の女性に出会ったことをきっかけに、彼女の人生に転機が訪れるのです。 女性への差別と抑圧と暴力がまかり通る環境にいたとしても、パワフルな楽曲の数々と共にストレートに女性たちの連帯と生きる道を描く様は、#MeToo運動を経た今もまた多くの人の心に響くでしょう。メロディアスかつ楽しくハッピーな曲だけでなく、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』も思わせるダウナー方向の楽曲およびパフォーマンスも強く印象に残ります。 ブロードウェイ版でも同じく主人公を演じていたファンテイジア・バリーノの歌声の素晴らしさはもちろん、映画『ドリーム』のタラジ・P・ヘンソン、第96回アカデミー助演女優賞にノミネートされたダニエル・ブルックス、実写映画版『リトル・マーメイド』のハリー・ベイリーの熱演も見逃せません。女性たちの不屈の精神から、勇気と希望を得たい人に強くおすすめします。2:『シング・フォー・ミー、ライル』(2023年)
アメリカの絵本『ワニのライル』シリーズを実写映画化した作品。「家族の元に歌うワニがやってきた!」という直球のファミリームービーで、その過程から『E.T.』や『パディントン』を連想する人は多いでしょう。1人ぼっちの少年の成長物語だけでなく、ダメダメなショーマンとのドラマも重なり合うため、人生の酸いも甘いもかみ分けた大人こそグッと来るかもしれません。見た目こそ危険だけど、美しい歌声を持つワニのライルからは、歌、音楽、そして「ひたむきさ」こそ何かの価値観を変えるほどの力を持っている、という教訓や希望も得られるでしょう。吹き替え版も超ハイクオリティで、大泉洋と水樹奈々のデュエットが聴ける『RIP UP THE RECIPE』がイチオシです。