世界を知れば日本が見える 第40回

【アメリカ大統領選を分かりやすく解説】頭角を現すトランプ前大統領、なぜここまで支持されている?

共和党の大統領選挙指名候補の初戦、ドナルド・トランプ前大統領が圧勝したことで大きな話題を呼んだ。2024年、国際情勢を大きく左右することになるアメリカの大統領選挙について、基本的なところから解説する。(サムネイル画像出典:Evan El-Amin / Shutterstock.com)

民主党=バイデン大統領、共和党=トランプ前大統領が事実上決定か

ジョー・バイデン
ジョー・バイデン大統領(画像出典:Alexandros Michailidis / Shutterstock.com)
では、民主党はどうなっているのか。民主党も各州で党大会や予備選が行われるが、ジョー・バイデン大統領が出馬宣言しているので、基本的には現職大統領がそのまま民主党の指名候補になる。民主党の場合は、初戦が1月23日のニューハンプシャー州の予備選だったが、バイデン大統領が難なく勝利している(ちなみに民主党側は次のサウスカロライナ州を実質的な初戦ということにすると主張している)。
 
今後の日程的に、2月は各州で、民主党も共和党も党員集会や予備選が行われる。だが次に注目してほしいのが、大統領選の党指名候補争いの山場となる3月5日の「スーパー・チューズデー」だ。同日に、どちらの党も多くの州で選挙が行われる。
 
もっとも、今年の大統領選では、スーパー・チューズデーを待つまでもなく、民主党はバイデン大統領で、共和党はトランプ前大統領が、指名候補に事実上決定しているはずだ。ただ正式に両党が指名候補を指名するのは、まだ少し先になる。指名が決定されるのは「党大会(全国大会)」である。
 
共和党は、7月15~18日にウィスコンシン州ミルウォーキーで党大会を開催する。民主党は、8月19~22日、イリノイ州シカゴで党大会を行う予定だ。これ以降は、バイデン大統領とトランプ前大統領が一騎打ちで大統領選の本選を戦うと見られている。
 
この本選も、少し分かりにくいので簡単に説明したい。
 
候補者が決まると、大統領討論会委員会が決めた討論会が3度にわたって行われる。テレビやオンラインで中継され、両大統領候補が自身の政策を訴えることなる。第1回は9月16日にテキサス州サンマルコス、第2回は10月1日にバージニア州ピーターズバーグ、第3回は10月9日にユタ州ソルトレークシティーで討論会が実施される予定だ。その間、両候補は全国を飛び回り、遊説を行う。
本選
本選は「選挙人制度」で、過半数の270人を確保した方が勝利  ※画像はイメージ(出典:Varga Jozsef Zoltan / Shutterstock.com)
本選の投票の仕組みは、「選挙人制度」と呼ばれる。できるだけ簡単に説明すると、それぞれの州に「選挙人」という代表者が存在する。この選挙人は州ごとに数が異なる。その理由は、人口に合わせているからだ。例えば、人口の多いカリフォルニア州では選挙人の数は54人で、最も人口の少ないワイオミング州は3人である。
 
実際の投票では、有権者は大統領候補者の名前を選んで投票する。そして勝利した候補が、その州にいる選挙人を総取りすることになる。
 
最終的に、全ての州の選挙人を合わせて、多くの選挙人を獲得した候補が勝利する。アメリカ全土で、選挙人の数は合計で538人なので、過半数の270人を確保したほうが勝利となる。選挙人の多い州(大票田と呼ぶ)を獲得した候補が選挙での勝利につながるのは言うまでもない。

大統領選を左右するのは、「スイングステート」と呼ばれる激戦州

もう1つ、大統領選を理解する上で知っておいたほうがいいことは、基本的に伝統的に共和党が勝利する州、民主党が勝利する州というのが、ほぼ決まっているということだ。例えば、リベラルな州であるカリフォルニア州やマサチューセッツ州などは常に民主党に投票することが分かっている。かたや保守的な州であるテキサス州やアラバマ州などでは共和党がほぼ勝利すると見られている。
 
そう考えると、大統領選を本当の意味で左右するのは、支持基盤が盤石ではなく民主党と共和党の間で揺れる「Swing states(スイングステート)」と呼ばれる激戦州ということになる。今回は、アリゾナ州、ジョージア州、ミシガン州、ネバダ州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州がスイングステートとして注目されている。専門家やメディアは特に、これらの州の動向を追うことになる。
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トランプ前大統領は、なぜここまで支持率が高いのか
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