ヒナタカの雑食系映画論 第57回

BLM、差別問題に真摯に向き合った最新映画5選。「少年が口笛を吹いたことで殺された」実話も

2023年の差別問題へ真摯(しんし)に向き合った映画を5作品紹介しましょう。その中には「アフリカ系アメリカ人の少年が白人女性に口笛を吹いたことで殺された」実話を描いた映画もあるのです。※サムネイル画像出典:(C) 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.

3:『エンパイア・オブ・ライト』(Disney+で配信中)

『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス監督による、海辺の映画館で働く女性と、新人の青年の交流を描いた作品です。同じ職場で働くうちに互いを理解し、相手のためを思うようになっていく、尊い関係性の変化を感じられるでしょう。

物語の舞台は、厳しい不況と社会不安に揺れる1980年代初頭のイギリス。しかも、主人公の女性はつらい過去に苦しむだけでなく、支配人から性的な搾取もされていて、精神を病んでしまいます。そこに、人種差別の風潮までもが、直接的な暴力となって襲い来る恐ろしさがありました。

第95回アカデミー賞撮影賞にノミネートされており、舞台である映画館の全ての色彩が美しく、ロマンティックな映像と共に物語がつづられます。だからこそ、現実の過酷さがより際立つのですが、それでも悲劇だけでは終わらせない、温かさと優しさに満ちた作品に仕上がっていました。

4:『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』(各配信サービスでレンタル中)

『アド・アストラ』のジェームズ・グレイ監督が、自身の少年時代の実体験をもとに作り上げたドラマです。舞台は1980年のニューヨークで、白人の中流家庭に生まれた12歳の少年が、クラスの問題児である黒人生徒と友人となるのですが……その後はある出来事がきっかけで、2人の関係が変わっていきます。

主人公の少年は、まったくというほどに差別的な感情を持っていません。だからこそ2人は親友になったのですが、その顛末(てんまつ)には思いもよらぬ人種差別の問題が関わっていました。子どもの頃に「悪事」をしでかしたことがある大人であれば、その頃の記憶が否応もなくよみがえって、より胸が締め付けられるでしょう。

その主人公の境遇を思えば、彼の理解者である祖父を演じたアンソニー・ホプキンスの言葉が、より尊く思えるのではないでしょうか。苦々しくはあるけれど、「それだけじゃない」子ども時代をいつくしむように描いた内容なので、『スタンド・バイ・ミー』が好きな人にもおすすめです。
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「全編ワンカット」のサスペンスドラマ
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