読み書き中心の英語教育からの脱却
日本にいても、やればここまでできるのです。しかし、これまで日本の英語教育は英文和訳と英作文が中心で、出てくる英単語も、日常生活の中ではあまり使われない大学入試必須英単語が主。これは、明治維新の時に、西洋の文化や科学技術をいち早く取り入れていくために、英文和訳が重視されたことに起因していています。しかし今必要とされるのは、相手とコミュニケーションをとる力です。それなのに、学校では方向性が違う上に、圧倒的に英語に浸る時間と、アウトプットの取り組みが少ないので、日本人の英語力は世界でも下位になってしまっているのですね。
今は国内でも英語力が必要になっているので、子どもに英語を習わせたいと考える方は多いでしょう。しかし、週に1回英語塾に通ったからといって、それだけで話せるようになるわけではありません。
英語力は、英語に接する時間に比例します。0からスタートして、ノンネイティブとして英語を使えるようになるには2000時間が必要と言われています。つまり、英語力は、どれだけ英語を浴びる時間を取れるかに比例しているのです。
学校では、例えば週4時間英語の授業があったとしても、1年間で140時間。中高6年間で840時間にしかなりません。しかも、授業のほとんどが日本語で行われているから、圧倒的に英語との実接触時間が足りないのです。
つまり、今の日本の英語教育では、学校だけの勉強では英語が使えるようにならないのは当たり前ということです。かと言って、学校教育はそんなに簡単には変わりません。ではどうすれば良いのでしょう。
家で親も一緒に楽しみながら英語に触れる
英語に触れる時間を増やすには、家庭で楽しみながら英語に接する時間を増やすのが1番早道。鬼丸先生も「英語力上達の鍵は家庭にある」といいます。そして、家庭で音声を聞きながら多読を進める方法として、ピットーク音声ペンを紹介してくれました。そして、もう1つ大切なことは、英語は楽しい! 私にもできる! と感じられるかどうか。
鬼丸先生の授業には、そのヒントがありました。先生は、終始一貫して「あなたたちは未来を創る人だよ! 力を持っているんだよ」と未来基準で子どもたちを勇気づけ、決してダメ出しせず、できたところを見て褒め、ゲーム性を取り入れた授業と、本物に触れさせることで学ぶ喜びを体感させていたのです。
子どもたちが英語を身に付けるために1番大事なことは、英語をキライにしないこと。そして、「楽しみながら学べる機会をいかに作るか」なのかもしれません。
この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。