ヒナタカの雑食系映画論 第52回

亀梨和也、山田涼介……「サイコパス役」がハマり過ぎている俳優は誰? 日本映画10作品を厳選

「サイコパスを演じた俳優がいい意味でトラウマ級に怖かった、またはとてつもなく魅力的だった日本映画」の例を一挙10作品紹介します。(サムネイル画像出典:(C)2023「怪物の木こり」製作委員会)

7:『ヒメアノ~ル』(2016年)森田剛

古谷実による漫画の映画化作品で、森田剛が演じるのは次々と殺人を重ねていく快楽殺人犯。最大の特徴は、前半はコメディーだったのに、後半から急転直下のサイコサスペンスに切り替わる構造。ほのぼのした日常の中で恐怖の片鱗(へんりん)をじわじわと見せていき、とある「転換」による「日常が恐怖に変わる瞬間」は悲鳴をあげてしまいそうなほどに恐ろしいものでした。

基本的に、サイコパスのキャラクターは、社会的な地位が高かったりカリスマ性があったりしますが、本作での殺人鬼は人生に絶望しきっており、失うものがないからこそ「なんでもしてしまう」危険性があり、その通りの印象を持たせた森田剛本人のメンタルを心配してしまうほど。R15+指定でもギリギリと思える過激な暴力描写と性描写がありますが、それも「すぐそばにあるかもしれない地獄」を示すために重要なもの。見た後は世界が変わって見えるほどのインパクトがある傑作です。

8:『みなさん、さようなら』(2013年)田中圭

久保寺健彦による小説の映画化作品で、団地から出られなくなった男の半生をつづったドラマです。田中圭は映画の後半に、義理の娘となるブラジル人の少女を虐待していると思しき男として登場します。一見すると穏やかな普通の男だからこそ、「仲良しごっこ」が終わった時の、田中圭の言葉、そして笑顔が、泣きそうになるくらいに怖かったのです。

平然と鬼畜な言動をする様は「魅力的だが理解できないサイコパス」そのもの。その後の対決での「笑い方」もトラウマ級の恐ろしさながら、どこか滑稽さを感じさせることにも注目です。田中圭は『月の満ち欠け』(2022年)と『哀愁しんでれら』(2021年)でも実にイヤなモラハラ男にハマっていたのでおすすめ(?)です。
次ページ
サイコパス役がすごい海外の映画も
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    『鬼滅の刃 無限城編』の「4DX」レビュー! 鑑賞前に確認したい5つのこと&感涙必至の魅力【ガチ感想】

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    海外では日常すぎる「おでかけブラトップ」に賛否……日本の「裸=恥ずかしい」価値観はどこからきた?

  • 世界を知れば日本が見える

    【解説】参政党躍進に“ロシア系bot”疑惑、証拠なく“自民党の情報操作”との見方も

  • AIに負けない子の育て方

    「学校に行きたくない」その一言に隠された、子どもからの本当のSOSとは【不登校専門家が解説】