7:『ヒメアノ~ル』(2016年)森田剛
古谷実による漫画の映画化作品で、森田剛が演じるのは次々と殺人を重ねていく快楽殺人犯。最大の特徴は、前半はコメディーだったのに、後半から急転直下のサイコサスペンスに切り替わる構造。ほのぼのした日常の中で恐怖の片鱗(へんりん)をじわじわと見せていき、とある「転換」による「日常が恐怖に変わる瞬間」は悲鳴をあげてしまいそうなほどに恐ろしいものでした。基本的に、サイコパスのキャラクターは、社会的な地位が高かったりカリスマ性があったりしますが、本作での殺人鬼は人生に絶望しきっており、失うものがないからこそ「なんでもしてしまう」危険性があり、その通りの印象を持たせた森田剛本人のメンタルを心配してしまうほど。R15+指定でもギリギリと思える過激な暴力描写と性描写がありますが、それも「すぐそばにあるかもしれない地獄」を示すために重要なもの。見た後は世界が変わって見えるほどのインパクトがある傑作です。
8:『みなさん、さようなら』(2013年)田中圭
久保寺健彦による小説の映画化作品で、団地から出られなくなった男の半生をつづったドラマです。田中圭は映画の後半に、義理の娘となるブラジル人の少女を虐待していると思しき男として登場します。一見すると穏やかな普通の男だからこそ、「仲良しごっこ」が終わった時の、田中圭の言葉、そして笑顔が、泣きそうになるくらいに怖かったのです。平然と鬼畜な言動をする様は「魅力的だが理解できないサイコパス」そのもの。その後の対決での「笑い方」もトラウマ級の恐ろしさながら、どこか滑稽さを感じさせることにも注目です。田中圭は『月の満ち欠け』(2022年)と『哀愁しんでれら』(2021年)でも実にイヤなモラハラ男にハマっていたのでおすすめ(?)です。