5:『いぬやしき』(2018年)佐藤健
奥浩哉の漫画の映画化作品で、共に人間を超越した力を持つ機械の体に生まれ変わった初老のサラリーマンと高校生の対決が描かれるSFアクションです。見る前は「(当時)29歳の佐藤健が高校生役はさすがに厳しいのでは……」と思ってしまいましたが、実際に見ると輝きのない目と冷酷無比な言動が完璧で感動するほど。終盤の皮肉に満ちたセリフは名言の域です。
2人の主人公の「対比」が際立つ脚本には工夫が凝らされており、それぞれが「食べようとしたもの」「誰を殺そうと、誰を助けようとしていたか」「何を信じ、何のために行動するのか」に注目してみるのもいいでしょう。「無関係の人を助ける」という正統派のヒーロー映画でもあり、冴えないけど頑張るお父さんの木梨憲武の姿に泣かされます。
6:『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年)柳楽優弥
街で強そうな相手を見つけては無差別に暴行を繰り返していく制御不能の青年を主人公とした青春群像劇です。彼は息を吸うように犯罪(万引き)を繰り返して、ボコボコにされても異常な回復力を見せて復活したりもする、いっさいの感情移入を阻むモンスターのような役割。現実離れしているとさえいえる役柄に説得力を持たせた柳楽優弥に圧倒されました。エンターテインメント性は低めかつ、意図的に観客に不快感を抱かせる作風なので、見る人を激しく選ぶでしょう。R15+指定納得の痛みが伝わるリアルな暴力に耐えられる人におすすめします。柳楽優弥は現在Disney+(ディズニープラス)で配信中のドラマ『ガンニバル』も、善良でありつつも狂気を宿す役柄にハマりまくっているのでおすすめです。