実際に近くにいれば恐ろしく危険な存在ではあるけれど、「安全圏」から観察できるのであれば惹かれてしまう……創作物におけるサイコパスなキャラクターは往々にしてそのような印象があるのではないでしょうか。
ここでは、「サイコパスを演じた俳優がいい意味でトラウマ級に怖かった、またはとてつもなく魅力的だった日本映画」の例を一挙10作品紹介しましょう。サイコパスと聞くと猟奇的な殺人鬼のイメージを持たれるかもしれませんが、決してそれだけではないことも分かるはずです。
1:『怪物の木こり』(2023年12月1日劇場公開)亀梨和也
第17回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した倉井眉介による映画化作品で、何よりの売りは「サイコパスVS連続猟奇殺人犯」という対戦カード。警察がサイコパスの犯罪者を追う創作物は数多くありますが、本作ではサイコパスの方が殺人鬼を迎え打つ(または追う)、逆転した構図になっているのです。 亀梨和也のキャスティングおよび演技は完璧というほかありません。とんでもなく美形であり、人間離れしたカリスマ性を持ち、朗らかな笑顔を浮かべる場面ではどうしても魅力的に見えてしまう一方、鋭い眼でにらみつけるようにゾッとするのですから。亀梨和也本人は「サイコパスというワードは印象が強いですが、過度に強い表現をしてしまわないよう、細かい表情や目の使い方を特に意識しながら二宮というキャラクターを演じました」と語っており、細やかな表現の妙にも注目です。 ほかの豪華キャストもいい意味で極端なキャラクターにハマっており、個人的には親友の脳外科医であり、同じくサイコパスである染谷将太のひょうひょうとしたとした言動にも惹かれてしまいました。真相にたどり着くまでのヒントがちりばめられており、二転三転する展開にハラハラできるなど、とにかくエンターテインメント性が高いので、PG12指定ならではの殺傷描写(もちろん必要なもの)が乗り越えられる全ての人におすすめします。2:『BAD LANDS バッド・ランズ』(2023年)山田涼介
直木賞作家・黒川博行の小説の映画化作品で、特殊詐欺を生業とするきょうだいを主人公としたクライムサスペンスです。安藤サクラ扮(ふん)する「やさぐれているようで面倒見が良くて隠しきれない弱さもある」お姉ちゃんが、「サイコパスと自称してヤンチャを通り越して迷惑をかけまくる」山田涼介を「放っておけなくなる」関係性がたまらなく魅力的。山田涼介は『グラスホッパー』(2015年)の時もツンデレ気味な殺し屋にもピッタリで、今回も危うさとキュートさを同居させる役を完璧に演じきっていました。猥雑な犯罪の世界で「もう後戻りできなくなる」様は見ていてつらく、苦しくもありますが、だからこそハラハラドキドキのエンタメ性があります。現在『バッド・ランズ』はほとんどの劇場で上映が終了していますが、2024年1月26日に山田涼介主演・浜辺美波共演の、声を捨てた青年と視力を失った音大生によるラブストーリー『サイレントラブ』が公開されるので、こちらにも注目です。