ヒナタカの雑食系映画論 第49回

ラストに賛否両論? 『ゴジラ-1.0』で議論を呼んだ“6つのポイント”を徹底考察【ネタバレあり】

絶賛に次ぐ絶賛が寄せられている公開中の映画『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン)』、議論を呼んだ6つのポイントについて、ネタバレ全開で解説・考察をしてみましょう。(サムネイル画像出典:『ゴジラ-1.0』公式X)

3:「敬礼」は誰に向けられたもの?

さらに大きく意見が分かれるのは、作戦を終え崩れゆくゴジラを見た元海軍士官の民間人たちが、誰からということもなく、次第に「敬礼」をしていくことです。

この敬礼は、ゴジラに特攻したかと思いきやパラシュートを開き生き延びた敷島に向けられたものなのか、それともゴジラに向けられたものなのか……もしも後者だとすれば、銀座を蹂躙(じゅうりん)し、あれほど多くの人の命を奪ったゴジラに向かって「敬意」を払うなど、あり得ないのではないか、という意見もあるのです。

結論を申し上げれば、ノベライズ版でははっきりと、彼らは「ゴジラに向かって敬礼を始めた」と記されています。「3年前まで戦争に身を投じていた男達の、最大の鎮魂の表出」のほか、「(核実験という)人間の愚かさによって焼かれ、その姿形を醜く変えられた被害者ともいえる。そんな気持ちが彼らに思わず敬礼をさせてしまったのかもしれない」とも記されていました。

敵である者にも敬意を払う、誇り高き軍人であったことを示す描写ともいえますが、それでもやはり賛否を呼んでしかるべき描写ではあるでしょう

4:「パンパン」と「恐れ入谷の鬼子母神」の意味は?

序盤に典子は、敷島から「ジリ貧でしょう」と問われ、「パンパンにでもなれっていうの?」と返します。パンパンとは、敗戦後の日本で、主にアメリカ兵を相手にしていた売春婦を指します。

また、終盤で秋津淸治(佐々木蔵之介)は、協力に駆けつけた水島四郎(山田裕貴)の声を聞いて「まいった、恐れ入谷の鬼子母神(きしもじん)だ!」と告げました。これは「相手の言うことには同意するが、そのまま認めるのはしゃくに障る」という意味で、「恐れ入る」と「入谷(江戸の地名)の真源寺にまつられる鬼子母神」を掛け合わせた言葉遊びです。

そんなふうに戦後すぐの当時の言葉が使われているのは興味深いのですが、少し気になったのは「メッセージ」「ダメージ」「ペア」という英語が使われていること。実際の戦時中には「敵性語」としての英語の自主規制の動きがあったものの、軍内部では戦前から英語が日常的に使われていたという話もありますし、決して間違った時代考証ではないとも思います。

ただ、戦後すぐの時代に使う言葉として違和感を覚えたという意見がそれなりに見られた以上、これらは「手紙」や「傷」や「組む」という言い方にした方が良かったのかもしれません。
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「自己犠牲」を否定するメッセージ
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