まだまだやるじゃん! 新生・SMの希望の光
矢野:まずプロローグシングル『Memories』を聞いたときに、「うわ、すごく新鮮なグループが出てきた!」という衝撃と同時に、僕が中高生の時期に好きだった2010年頃のK-POPの香りも感じられたんです。一見相反するような2つの感覚が共存するって、なかなか面白いなって。
ゆりこ:『Memories』と『Get A Guitar』もいつものSM節がない!という衝撃がありました。これまでのSMグループの曲には必須とも言える、メインボーカルが声を張り上げる“聞かせどころ”がなかったからです。
矢野:『Get A Guitar』は本当にアメリカのポップソングっぽい。ブルーノ・マーズやマイケル・ジャクソンっぽさも感じましたね。そこはBTSの『Dynamite』『Butter』からの影響もゼロではないのかも。そして近年はK-POPに限らず「聞かせる曲」よりも、気持ちよく乗れる「イージーリスニング」にトレンドが移っていますよね。NewJeansもその代表例だと思います。
ゆりこ:その潮流にとうとうSMも乗ったんだな、っていうのが意外でした。もちろんこれまでも世界的なトレンドをしっかり取り入れつつ、同時に独自路線を守ってきた部分があったと思うんです。RIIZEの曲は2022年の買収騒動以降、最もSMの変化を感じた部分だったかもしれない。ちなみに矢野さんはどんな部分に2010年代のK-POPを感じましたか?
矢野:なんか、そんなにガチャガチャしていないというか、初めて聞いたときに「あれ、これって本当に初めて聞いたんだっけ?」っていうくらいなじみやすい音楽だなと感じて。たぶんそれは、教室でクラスメイトとお気に入りの曲を聞きあった青春時代が思い出されるような、どこか今までの僕の体験や記憶とリンクする部分があるからかなと思っています。ちょっと前の日本のアニメのオープニング曲って雰囲気も、そう感じさせている要因の一つかも。
ゆりこ: なるほど! 最新曲の『Talk Saxy』は先輩アーティストのEXOやNCT、それ以前から続くSMイズムを感じるという声が多く上がっていますよね。
矢野:ゆりこさんはRIIZEをどう捉えてますか?
ゆりこ:まさに「SMの希望の光」。彼らの登場で、まだまだやるじゃんSM!って思った人は多いはず。SMエンタのボーイズグループはNCT以降7年間も新しいグループが出ていなかったんです。これまで5年も空いたことはなかったと記憶しています。その間にBTSとHYBEの大躍進があり、買収騒動、創業者が去るという変革と危機を経験しているので……社運がかかったグループだとも感じます。
矢野:本当に「満を持して」という言葉がピッタリです。SMにとってここ1、2年は厄年でしたから。彼らにかかる期待、プレッシャーもとっても大きかったでしょう。
ゆりこ:元々NCTのメンバーで、人気もあったショウタロウさんとソンチャンさん(合わせてソンタロ)がNCTから脱退して新グループに参加する発表があったとき、ファンの中で賛否両論がありました。せっかくNCTとして頑張ってきたソンタロを……と。その一方でSMの新グループへ対する相当な自信も感じていました。蓋を開けてみたらRIIZEは全然ソンタロが浮いていない。先に名前も知られていて人気もあるメンバーが少し目立ったとしても不自然じゃないのに、そうならないぐらいRIIZEの他メンバーが“強い”ってことなのですよ。