恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第85回

「瀬戸内国際芸術祭」の玄関口としても注目! 観光列車で行く瀬戸内と“現代アートの港町”宇野エリアへの旅

岡山県のJR「宇野駅」周辺は近年、現代アートを中心とした「瀬戸内国際芸術祭」の玄関口として進化している。新たな魅力を列車とともに紹介しよう。

宇野駅
現代アートのデザインを施したJR「宇野駅」の駅舎。JR宇野みなと線アートプロジェクト/作者=エステル・ストッカー
かつては四国への連絡口として栄えたJR「宇野駅」(岡山県)は、瀬戸大橋の開通後、主要ルートから外れてしまった。しかし今、現代アートを中心とした「瀬戸内国際芸術祭」の玄関口として変身を遂げている。新たな魅力を列車とともに紹介しよう。

宇野線の栄枯盛衰

宇野駅
ローカル列車が発着する朝の宇野駅。新型車両「Urara」の姿も見える
四国への重要ルートとして建設された国鉄宇野線(岡山~宇野)。かつては、東京駅や大阪駅から直通する特急列車や急行列車が行き交いにぎわっていた。旅人は宇野駅で列車を降りると、宇高連絡船に乗り換え、高松を経由して四国各地へと向かった。

1972年の山陽新幹線・岡山開業、1975年の山陽新幹線・博多開業に伴い、宇野線は、岡山駅で新幹線からリレーする快速列車がメインとなり、長距離の優等列車は夜行列車のみが残った。

1988年4月、瀬戸大橋が開通すると、四国へのメインルートは瀬戸大橋線へと移行した。JR宇野線の岡山~茶屋町は、瀬戸大橋線に組み込まれたため、重要路線であり続けている。

それに比べ、茶屋町~宇野は行き止まりのローカル線に転落した。連絡船との接続でにぎわった宇野駅は、旅客輸送のみならず、四国へ直通する貨車の入換などで広大な敷地を有していたものの、宇高連絡船廃止で不要になった。
普通列車
宇野駅に停車中の普通列車・岡山行き
宇野駅構内は規模を大幅に縮小し、連絡船の中までつながっていた線路は撤去された。港からやや離れた場所で線路は行き止まりとなり、1面2線のこぢんまりとした終着駅に変貌している。

宇野線のスター「ラ・マルせとうち」

現在の宇野駅に発着する列車は、普通列車のみ。岡山駅から直通する列車と瀬戸大橋線との分岐駅・茶屋町と宇野の支線区間のみを往復する列車の2種類がある。いずれにせよ、往年のように特急列車が行き交うことはなくなり、地味な感じがする。
ラマルドボア
岡山駅に停車中の「ラ・マル​​​​​・ド・ボア」

その中で、唯一、脚光を浴びる列車として注目されているのが、「ラ・マル・ド・ボア(La Malle de Bois)」を使用した観光列車「ラ・マルせとうち」(岡山~宇野)だ。

この列車は、2016年に行われた「晴れの国おかやまDC(デスティネーションキャンペーン)」および「瀬戸内国際芸術祭2016」に合わせてデビューした。同じく、宇野駅駅舎の外壁も芸術祭出展作品としてイタリア人の画家エステル・ストッカーの手により現代アート風のものに変わった。

八浜駅
「ラ・マルせとうち」が停車する八浜駅。JR宇野みなと線アートプロジェクト/作者=エステル・ストッカー

「ラ・マル・ド・ボア」をデザインした北川フラム氏とは異なる作者のものであるにもかかわらず、列車と駅は似たような雰囲気となり、よくマッチしている。
 

>次ページ:岡山駅から宇野駅までノンストップ

 

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