恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第86回

小田急8000形と東急9000系が西武鉄道へ、なぜ珍しい「サステナ車両」の授受が実現したのか

西武鉄道が東急と小田急から車両を譲受すると発表した。大手私鉄が他の大手私鉄から中古車両を譲受するのは大変珍しいが、その背景にあるのは……。

連載「鉄道雑学ニュース」
乗り物の域にとどまらず、見ても、撮っても、もちろん乗っても面白い鉄道の世界。知れば知るほど奥が深くて面白い鉄道に関する最新情報&雑学を、「All About」の鉄道ガイドで旅行作家の野田隆が自ら撮影した駅舎や車両画像とともに分かりやすく解説する。


西武鉄道は9月26日、東急電鉄から「9000系」車両を、小田急電鉄から「8000形」車両をそれぞれ譲受すると発表した。中小私鉄が大手私鉄から中古車両を譲受するのはよくある話だが、大手私鉄が他の大手私鉄から中古車両を譲受するのは大変珍しい。その背景を探ってみた。
 

西武鉄道、他社から「サステナ車両」を譲受

西武鉄道が譲受するのは、環境負荷の少ない「サステナ車両」だ。「サステナ車両」というのは、西武鉄道独自の呼称で、VVVFインバータ制御車両のことを示す。

西武30000系
西武のVVVFインバータ制御車両30000系(愛称「スマイル・トレイン」)
これまで西武鉄道では、本線系の池袋線と新宿線に新型車両を導入し、それによって余剰となった旧型車両を「玉突き人事」のように支線系路線に配属してきた。その結果、支線系路線では、旧型車両ばかりが活躍するものの、省エネルギーという観点からは、効率がよくなかった。

無論、本線系も支線系も新型車両を一気に導入すれば事は簡単だが、高価な新型車両を膨大な両数取りそろえるのは経営の上では大変なことである。
西武多摩川線
単線の西武多摩川線で活躍する旧型車両
そんなとき、東急と小田急に省エネルギーに貢献できるVVVFインバータ制御車両が余剰となっていることが分かったため譲受して、西武鉄道の車両のVVVF化を一気に推進し、2030年度までに車両のVVVF化100%達成することが可能になったのである。

東急9000系と小田急8000形

東急9000系
東急大井町線で活躍中の9000系
譲受する「サステナ車両」は、東急電鉄の9000系および小田急電鉄8000形である。東急9000系は、現在、大井町線・田園都市線(大井町~二子玉川~溝の口)で活躍中だ。老朽化も進んでいることから、新型車両に置き換えられ、2025年度以降に西武多摩川線、多摩湖線、西武秩父線、狭山線に導入予定である。
小田急8000形
小田急8000形
一方、小田急8000形は、通勤型車両の主力として、小田原線、江ノ島線、多摩線において、急行から各駅停車まで幅広く活躍してきた。このたび、西武鉄道が譲受することとなり、2024年にも第1編成が国分寺線に導入される。
西武4000系
サステナ車両導入で去就が注目される4000系。現在は西武池袋線・飯能~西武秩父線・西武秩父で活躍中

2種類の「サステナ車両」個々の譲受数は一部報道によると東急9000系が約60両、小田急8000形が約40両、合わせて約100両ということで、かなりの規模の譲受である。もちろん、線区の事情により、多少の改造は必要であろう。また外見の塗装がどうなるのか、ステンレス車両の場合は帯の色が変わるのかどうか、気になるところだ。
 

>次ページ:過去にもあった大手私鉄同士の車両の譲受
 

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