恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第86回

小田急8000形と東急9000系が西武鉄道へ、なぜ珍しい「サステナ車両」の授受が実現したのか

西武鉄道が東急と小田急から車両を譲受すると発表した。大手私鉄が他の大手私鉄から中古車両を譲受するのは大変珍しいが、その背景にあるのは……。

過去にもあった大手私鉄同士の車両の譲受

名鉄
名鉄の車両に多いスカーレット色

 大手私鉄同士での車両の譲受といえば、1975年と1980年に東急3700系が名鉄(名古屋鉄道)に譲渡されたことがあった。2回にわたり20両が移籍し、その後、1985年まで活躍した。

東急在籍時の晩年は目蒲線(現・目黒線および多摩川線)で働いていたが、その時のグリーンの塗装が名鉄に移ってからは、名鉄の標準色であるスカーレットに塗り替えられた。当時のように、移籍先の会社の塗装に変更となるのかどうか、興味深々である。

SDGsの観点からも有効な施策

西武40000系
西武のVVVFインバータ制御車両の1つ40000系
西武鉄道の試算によると、VVVF化100%による使用電力量削減に伴うCO2排出の削減は「サステナ車両」100両導入により年間約5700トンになるという。これは、約2000世帯の年間排出量に相当する。

また、旧型車両に比べ、使用電力量は50%ほど削減される。中古電車であっても「サステナ車両」の導入はSDGsの面からも有効な施策なのである。
 
資料提供=西武鉄道
 
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
 
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