岡山駅を起点に日生(赤穂線)、宇野(宇野線)、三原(山陽本線)、琴平(JR四国・土讃線)へと向かう観光列車「ラ・マル・ド・ボア(La Malle de Bois)」(フランス語で「木製の旅行かばん」)。
白地に横文字やイラスト、かばんをイメージした窓枠を黒であしらったしゃれた列車だ。今回、日生行きの「ラ・マル備前長船」に乗車したので、車内の様子と沿線の観光スポットを紹介しよう。
おしゃれな2両編成の「ラ・マル・ド・ボア」
「ラ・マル・ド・ボア」は2両編成。国鉄末期に登場し、瀬戸大橋を渡って高松に向かう「マリンライナー」などに使用された213系近郊型電車を改造した車両だ。通路を挟んで片側が2人掛けクロスシート、片側が窓を向いたカウンター席となっている。
1号車と2号車で配置が左右逆になり、日生へ向かう場合、先頭の2号車のカウンター席は山側、1号車のカウンター席は海側になる。といっても、「ラ・マル備前長船」の車窓で海が見えるのは日生駅到着前のわずかな時間で、それも建物に遮られて少し見えるだけだ。列車は、全てグリーン車で快速電車。従って、特急料金は不要で、運賃にグリーン車の指定料金780円(50キロまで)のみが加算される。岡山駅から日生駅まで乗車すると 1640円(運賃860円+グリーン車指定券780円)と、リーズナブルだ。
この列車は、現代美術の瀬戸内国際芸術祭の総合ディレクターを務める北川フラム氏が内外装のデザインを担当、外装デザインとロゴは大黒大悟氏、企画デザインは小平悦子氏が担当している。そのためか、ドア付近のデッキに相当する棚の上には汽車をイメージした抽象的なオブジェが置かれ、現代アートの美術館の雰囲気が充満している。
八点鍾を鳴らして出発
もっぱら、この列車専用ホームともいうべき岡山駅5番乗り場に設置されている八点鍾を駅員さんが鳴らすと発車。八点鍾は船乗りが時を知らせるために鳴らす鐘のこと。船ではないけれど、海へ向かって走る列車なので、航海を思わせるしゃれた計らいである。旗を振った駅員さんたちが列車を見送ってくれる。