日本航空はジャニーズタレントの起用を当面見送り
厳しすぎると思うかもしれないが、性犯罪の組織的黙認は完全に「共犯」なのだ。例えば、ある会社で女性社員たちが社長に片っ端から強姦されていたとしよう。その事実を多くの男性社員は知っていたが、左遷されたくないのでとがめることもなく、警察に通報することもなく、「うちの社長も好きだよなあ」なんて見て見ぬふりをしていた。
このような事実が明らかになった時、取引をしている会社のほとんどは付き合いを見直すはずだ。中には、「強姦をしていたのは社長で、現社員は問題なし」なんてことを言って取引を継続する会社もあるだろうが、それは社会通念上かなりヤバい会社だろう。
今回、日本航空が会見後、ジャニーズタレントの起用を当面見送る方針を示したが、これがまともな対応であって、フジテレビやテレビ朝日のように「タレントには問題なし」なんて言う方が異常なのだ。
ジャニーズ事務所による会見の真の目的は
これは筆者の推測にすぎないが、今回の会見の真の目的は、「所属タレントは性加害をうわさレベルでしか知らなかった」というストーリーを社会に広めることではないか。そうなれば、とりあえずテレビ局と事務所の関係はこれまで通りにキープできる。
日本航空のような一般企業とかけ離れた対応がスコーンと出てきたことからも、主要取引先である民放キー局には、このような「ストーリー」でいくと事前に伝えて、合意ができていたのだろう。
筆者も企業危機管理を生業としているので、既存の取引先との関係を守ったり、ビジネスモデルを変えたくないという企業論理で、このような苦しい「ストーリー」を持ち出すという力学は理解できる。
ただ、経験から言わせていただくと、こういう場で述べた「うそ」は必ず発覚する。そして、事態を悪化させる。
今からでも遅くないので、「うわさレベル」を撤回して、真実を明らかにすべきだ。そして、「ジャニーズ事務所」を守りたいのなら、やはり誰かがこの「人類史上最悪の性犯罪」を野放しにしていた「共犯」の誹り(そしり)を受けなくてはいけないだろう。
誰も傷つかない、誰も会社を去らない、死んだ人間をボロカスに叩いて済むなんてムシのいい企業危機管理は存在しない。
>ジャニーズ事務所の会見に対するNHKと民放キー局の声明を見る
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。