消費の鈍化、企業の投資抑制……負のスパイラルに
消費の鈍化により、企業も投資を控える。そうして、中国国内では物価下落が続くデフレの状態に陥っているのだ。こうなると、企業の生産性も伸びないし、企業や政府の債務や負担は大きくなる。
外国からの直接投資も低迷している。2023年1~3月の海外からの直接投資は1000億ドル減り、200億ドルにまで激減。4~6月の対中国の外国投資は、前年同期比87.1%の減少率で、統計が確認できる1998年以降で最低を記録している。
加えて、ワシントンDCに拠点を置くIIF(国際金融協会)によれば、2023年8月の最初の2週間で、中国の株式から37億4600万ドルの資金が流出している。これは新型コロナウイルスの感染が拡大してから2番目に大きな流出額である。
中国離れの原因は
中国離れの原因としては、米中の経済摩擦による関税や輸出規制によるデカップリング(米中経済の切り離し)もあるが、それだけではない。ビジネス界での規制強化をしてきた中国に対する外国企業などからの不信感は高まり、外国企業が投資に二の足を踏む理由になっている。
例えば、中国政府は、もともと恣意(しい)的な運用ができる反スパイ法で不透明にビジネスパーソンなどをスパイ容疑などで拘束してきた。邦人もその対象になってきており、直近ではアステラス製薬の社員が拘束された例は記憶に新しい。
さらにこの反スパイ法をさらに厳しくした改正案を2023年7月から施行。アメリカの企業も何社も当局から突然、家宅捜索を受け、いきなり社員5人がスパイ容疑で拘束されたケースもある。基本的な経済データを収集しても捕まってしまう可能性があるので、欧米企業は中国に投資しにくい状況にある。中国とビジネスで関わるリスクは高まっており、中国と関係を避けようとする動きがでるのも当然だろう。
また中国国内企業の影響力が強大化することを中国共産党が嫌うので、政治によるリスクも無視できない。IT大手のアリババやテンセントが、ユーザー管理などに絡んで中国当局によって莫大(ばくだい)な罰金を課されている。政府の規制によってITなどさまざまな産業や企業が打撃を受けている。外国企業も注視している。