ヒナタカの雑食系映画論 第27回

なぜ人気? 1980年代から続く「日本のヤンキー映画」の系譜。大ヒット中の『東リベ2』からも魅力を探る

前後編で公開されている『東京リベンジャーズ2』が大ヒット公開中。ヤンキー映画の系譜を振り返り、『東リべ』に至るまで、ヤンキー映画のどのような面が支持され、人気を得たのかを考察してみます。(C)和久井健/講談社 (C)2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

『東京リベンジャーズ』がヤンキー映画の新たな代表作と呼べる理由

映画『東京リベンジャーズ』シリーズの原作漫画である『東京卍リベンジャーズ』(講談社)は、累計発行部数が現在7000万部超と、社会現象級の大ヒット作。映画第1作はコロナ禍の2021年の公開にもかかわらず、約45億円の興行収入を記録しました。

何しろエポックメイキングだったのは、ヤンキーものに“タイムリープ”ものを組み合わせたこと。主人公の「かつて恋人だった女性の命を救う」という明確な目的意識は感情移入がしやすいですし、過去と現在にどのような因果関係があるかを解き明かすミステリー的な側面も備えています。
 
(C)和久井健/講談社
(C)2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

タイムリープ先を10年前(原作漫画では12年前の2005年)の“ガラケー”がある時代に設定することで、不良の学生そのものになじみがなかったり、前時代的に映ってしまったりする若い世代にも受け入れやすくなっていたのかもしれません。タイムリープの要素を備えることで、『東リべ』はさらなる広い層へ訴求ができた映画と言えるでしょう。
 
(C)和久井健/講談社
(C)2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

そして、映画の『東リべ』シリーズでは、前述した『クローズZERO』と『HiGH&LOW』よりも刺激の強い暴力シーンが見受けられます。生身の人間による暴力の“痛み”を感じさせることそのものに実写映画化の意義があると思えましたし、続編の後編となる『決戦』で展開する、原作を見事に再現した廃車場でのバトルは圧巻のひと言。スクリーンから伝わる“熱量”そのものがすごい内容でした。
 
(C)和久井健/講談社
(C)2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

まるで漫画からそのまま出てきたようなキャスト陣のハマりぶりも大きな見どころ。ひょうひょうとした印象とカリスマ性を同居させる吉沢亮、『HiGH&LOW』シリーズに続き荒くれ者のようで頼れる一面もある山田裕貴、続編で初登場となる永山絢斗、村上虹郎、高杉真宙もこれ以上はないほどの存在感と熱演でした。それらをもって、『東リべ』はヤンキー映画の新たな代表作としても語られるようになっていくのではないでしょうか。
 
(C)和久井健/講談社
(C)2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会
 

ヤンキー映画で描かれる、「暴力」だけではない魅力

ほかにも、『別冊マーガレット』(集英社)で連載された、少女漫画原作ながらヤンキーものとしての側面もある2014年の『ホットロード』、2018年からドラマが放送され、2020年のコロナ禍での公開ながら53.7億円の大ヒットとなった『今日から俺は!!』もヤンキー映画の系譜では重要作でしょう。

また、こうしてヤンキー映画を振り返ってみると、「拳1つでのし上がっていく」ような暴力についてはやや俯瞰的、客観的には間違った価値観であると捉えたうえで、「それでもなお残る」男たちの絆や連帯感を描く内容が多いように見受けられました。そして、キャラクターへの憧れやある種の関係性萌えが、俳優陣の魅力と強く結びついているからこそ、ヤンキー映画は強い人気を得ているのでしょう。

そして、男たちの絆や連帯感はどこか儚くも切ないものでもあり、やはり暴力だけでは語ることができない“何か”があるのです。その何かを考えながら、これらのヤンキー映画を観てみるのも良いでしょう。


この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「日刊サイゾー」「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の魅力だけでなく、映画興行全体の傾向や宣伝手法の分析など、多角的な視点から映画について考察する。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。


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