ザッカーバーグ氏に感じる“ジレンマ”
筆者は、ザッカーバーグ氏がメタバースに入れ込んだ理由は、これまで「GAFA」の一角として扱われてきたメタ社にあったジレンマに原因があるのではないかと考えている。
実はGAFAとは日本を中心に使われてきた呼び名で、Google、Amazon、Facebook、Appleを一括りにして、アメリカのITプラットフォーマーと呼ばれていた。
だが実際のところフェイスブック(メタ)社だけは、OSを提供したりスマートフォンやパソコンなどの端末も提供したりするグーグルやアップル、そしてクラウドサーバやKindle(キンドル)などを提供するアマゾンとは異なり、決してインターネットを使ったサービスを提供する基盤となるようなプラットフォーマーではない。
メタ社が提供するFacebookやInstagramは、他社のOS(基本ソフト)の上でのみ動く単なるオンラインのサービスに過ぎず、決してプラットフォーマーという感じではないのだ。
名実ともにプラットフォーマーの仲間入りを目指したが……
だからこそ、メタバースで新たなプラットフォームを作り、名実ともにプラットフォーマーの仲間入りをしたかったのではないかと指摘されてきた。それは、同社の正式名称が「メタ・プラットフォームズ」という名称であることからも分かる。だが思うようにいかなかった。
そんな背景がある中で、メタ社は今回、新たなプロジェクトを立ち上げ、勢いで一気にThreadsを立ち上げたのではないだろうか。そして今後、FacebookやInstagram、WhatsAppといったサービスを使い、ほかのプラットフォーマーと同じような幅広い事業を展開させていく野望を抱いている可能性がある。
メタ社にしてみれば、今回のThreadsは何としてでも成功させたいプロジェクトだろう。メタ社の動向は引き続き注目していきたい。
この記事の筆者:山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」