どうする学校?どうなの保護者? 第2回

「PTAをなくす」は大変か。PTAを廃止した2人の元会長に聞いた“解散のリアル”

PTAの「解散」や「廃止」の動きが注目を集めています。PTAを解散するのには、実際のところどんな作業が必要で、どんな壁が立ちはだかるのか? この春「PTA解散」を経験した2人の元PTA会長に「解散のリアル」を聞かせてもらいました。

柏小PTAが解散できた理由

1つは、立川市では既にPTAの解散事例が2件あったこと。どちらの学校にも、今は別の保護者組織があるそうですが、市の教育委員会や校長先生たちが「解散」に比較的慣れており、受け入れられやすかったのではないかと思います。

もう1つ、吉澤さんが大きな農家を営み、地元で知られた人物であったことも、いくらか話を通りやすくしたかもしれません。ただ、逆に「ヨソモノ(転入者)だから、周囲を気にせず言いたいことを言いやすかった」という会長さんの話も聞くことがあるので、「地元で顔が利く」ことが必須かどうかは、ケースバイケースのところがありそうです。

さらに、解散時に「フィードバック委員会」という形で数人の役員が残ったことも、不安を払拭(ふっしょく)する上で一役買ったようです。特別な活動はしないものの、学校運営協議会の集まりの際などにPTA解散の影響がないか校長に確認しているそう。今のところ特に問題はないようです。

一方、明石市の幼稚園のPTAでは「当時の園長先生が地域の団体と全部話をつけて、抜けてくれた」ため、その点はスムーズだったそうです。ちなみに、地域の団体に由夏さんが話し合いを持ちかけたときは「お茶を濁されるばかり」でしたが、男性の園長が話をしたら早かったということです。

 

会長や役員が楽しい、だけじゃPTAはダメ

PTAを解散する際の主だった実務は、以上のようなところです。由夏さんの幼稚園のPTAでも、吉澤さんの柏小PTAでも、「解散した後、この活動はどうしよう」と悩んだものはいくつかあったそうですが、それらの詳細はまた別の機会にお伝えできたらと思います。

最後に、2人の元PTA会長からのメッセージです。

「PTAはあったほうがいい、という人がいるなら、その人がやるべきでしょう。あったほうがいいけど自分はやらない、という人のためにほかの人が動くのはおかしい。それを求められるなら、解散一択だなと思いました」(由夏さん)

「PTA会長だったときは週3、4回は飲みに行っていたので、(解散してそれらがなくなり)楽しみが減ったな、とは思います。だからやっぱり、そういうのが好きな会長や本部(役員)は、PTAがあることが楽しいと思うんです。でもそれじゃダメなんですよね、会員さんがいるんだから」(吉澤さん)

PTAの解散については賛否あるでしょう。解散するにせよしないにせよ、おのおのの保護者や教職員が「なんとなく流れに身を任せる」のでなく、「自分はどう関わるのか/関わらないのか」を主体的に判断できるようになるといいな、と思います。


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この記事の執筆者:大塚玲子 プロフィール
ライター。主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
 
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