どうする学校?どうなの保護者? 第4回

育成会が母親たちを長時間詰責。PTAの“謎ルール”に立ち向かった「班長」の身に起きたこと

全国的にPTAの見直しが進んでいますが、地域によっては「ちょっとしたことを変えるのも大変!」という例も、まだまだあります。旧来型のパトロールのルール変更に取り組んだ、ある「班長」さんに話を聞かせてもらいました。

【連載:どうする学校? どうなの保護者?ーVol.4ー】
PTAの見直し
育成会の謎ルールに立ち向かった班長の身に起きたこととは

ちっとも簡単じゃないPTAの見直し

ここ数年、PTAの在り方や、その活動を見直す動きが全国に広がっています。
 
見直しの中身は、それぞれのPTAで異なります。加入や活動を「義務」として保護者や教職員に強いるのをやめ、おのおのの意思を尊重する形に変える「改革」レベルのものや、活動の頻度を減らす、ルールを変えるなど、わりあい簡単そうな見直しレベルのものなど、大きなものから小さなものまでいろいろあります。
 
「簡単そう」と書いたのは、実際はちっとも簡単じゃない場合も、意外とあるからです。「えっ、それくらい、現場判断ですぐ変えられるでしょ?」と思われるようなことでも、現実には多くの相手と何度も交渉した末、ようやく実現していたりします。
 
前回、旗振りやパトロールの「当番」をなくした例をいくつか紹介しましたが、「当番は残ったままだけれど、ルールをゆるくした」という例も聞きました。一見地味ですが、これも実は、裏では大変な経緯があったとのこと。
 
どんなことが起きたのか。「班長」としてルール変更に奮闘した、ある1人の父親に、ことの顛末(てんまつ)を教えてもらいました。
 

コロナ禍の活動停止を機にルールをゆるめた

関東地方のある小学校のPTAは、市の認可を受けた「育成会」という団体の指示のもと、パトロールの活動を行ってきました。
 
育成会が求めるパトロールのルールは、なかなか古めかしいものでした。「当番は2人1組(なぜか夫婦や友人同士は不可)」「腕章を着用」「終わったら、手書きの報告ノートや腕章を次の当番に回す」など。

ほかにも「私語を謹んで、声を上げて回る」というルールがあったのですが、さすがにこれは、守っている人がいなかったとか。
 
これらのルールは、当然ながら保護者たちには不評でした。当番のペアは「班長」になった保護者が決めるのですが、当番の際はペアとなった知らない保護者と日程を調整しなければならず、また報告ノートや腕章を次の当番に回す際も、知らない保護者とやりとりしなければなりません。しかも、相手はほぼ毎回変わります。
 
筆者も昔、子どものスポーツチームの保護者会で似たような経験をしましたが、やはりいろいろと苦労しました。なかなか連絡がつかない人もいましたし、話が行き違って寒空の下を右往左往したり、炎天下で相手の家を探して歩き回ったりしたことも。当番を組む作業も慣れるまで四苦八苦したものです。
 
しかし、そんな状況に変化が訪れました。2020年度は新型コロナウイルスの影響で、パトロール活動が休止となったのです。
 
翌年度は育成会の指示でパトロールが再開されましたが、その際、ある地区で班長をしていた一郎さん(仮名)は、自分の班のルールをゆるめることにしました。当番は「1人でもOK」とし、当番のペアを「夫婦や友人でもOK」としたのです。
 
さらに、活動への参加強制をやめ、「やれそうなときにやってください」と呼びかけ、パトロールの報告は紙のノートではなく、オンラインで行えるようにしました。
 
地区の保護者たちは、大喜びでした。この頃は在宅勤務が広がっていたので、父親の参加も大幅に増えたそう。もちろんこれらのルールを変えたことで、犯罪が増えることも、不審者が増えることも、ありませんでした。


次ページ:育成会がPTA委員の母親たちを詰責した驚きの理由
 
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