「報道の自由度」G7最下位の日本における、ジャニーズ事務所への“配慮”
今回の問題で浮き彫りになった「ジャニーズ事務所とメディアの関係性」について、専門家はどう見ているのか。エンターテインメント関連の法務に詳しい尾崎聖弥弁護士に話を聞いた。尾崎弁護士「国境なき記者団による2023年の『報道の自由度ランキング』では、日本は68位とされ、G7では最下位となってしまいましたが、それを裏付けるかのように、日本国内でもマスメディアによるジャニーズに対する忖度の疑惑が噴出しています。
先日博報堂が、自社で発行している雑誌『広告』(3月31日発売号)からジャニーズに関連する記載を削除した件が話題となりましたが、その際に博報堂は『ジャニーズ事務所はビジネスパートナーであるから配慮した』という旨を説明しました。
おそらくこれがこの問題に対する最も分かりやすい答えでしょう。新聞・雑誌・週刊誌・テレビなどのマスメディアにとって、ジャニーズ事務所は大切なビジネスパートナーであるため、彼らはジャニーズ事務所に関する報道について配慮するのです」
いつまで「ビジネスパートナー」に対する“配慮”を繰り返すのか
今後、この問題に対するマスメディアの報道姿勢はどうあるべきなのだろうか。尾崎弁護士は続ける。尾崎弁護士「憲法による報道の自由を与えられ、特殊な保護を受けているマスメディアがこのような態度をとることには大きな問題があります。社会が複雑化し、膨大な量の情報があふれている現代において、一般市民が社会的な問題について考え、意見を持つためには、専門家であるマスメディアによる取材・報道によって得た情報が必要不可欠。だからこそマスメディアは、憲法上の報道の自由を保証されているのです。
それなのにマスメディアが『ビジネスパートナー』に対する配慮を繰り返していては、私たちは社会的な問題に対する意見を持つことはできなくなります。
マスメディアは今一度、憲法上の報道の自由が与えられた趣旨に立ち返り、忖度のない報道に向けて変わっていくべきでしょう」
ジャニーズ事務所自体の対応だけでなく、この問題に対する報道内容やタイミングで、各メディアの姿勢や資質が問われている。引き続き、今後の動向に注目したい。
毒島サチコ プロフィール
愛媛県出身のライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
取材協力:尾崎聖弥 プロフィール
第一東京弁護士会。エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク所属。企業に対するコンプライアンス研修などを担当している。
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