世界を知れば日本が見える 第23回

市川猿之助の両親に何が起きたのか、死因究明専門家の法医学者に聞いた「薬物中毒」の現実

歌舞伎役者・市川猿之助さんの両親が死亡した件で、報道によると「向精神薬中毒」で亡くなった疑いがあるという。向精神薬中毒や薬の飲み方の危険性について、日本大学医学部法医学教室の奥田貴久教授に聞いた。

アルコールとの同時摂取も危険

山田:大量摂取した場合にアルコールを同時摂取するケースもあるようですが、アルコールと薬を一緒に飲むと何が起きるのでしょうか。
 

奥田教授:薬の代謝を遅らせるので、体内に薬の成分が長く残ることになります。大量の薬と一緒にアルコールを飲むのは危険な行為です。
 

一家心中、アメリカでは「Homicide-Suicide」と呼ばれ……

山田:猿之助さんの事件では、「死んで生まれ変わろうと家族で話し、両親が睡眠薬を飲んだ」というような話をしているようですが、こういう「心中」するケースはよくあるのでしょうか。
 

奥田教授:自ら薬を飲んだのであれば複数人が同じ意思で自殺する「集団自殺」と言えます。一方で、薬を無理やり飲まされたということであれば、無理心中になります。「無理心中」というと、オブラートに包まれたような言い方に感じますが、アメリカでは「Homicide-Suicide」と呼ばれ、直訳すると「他殺-自殺」です。銃が普及しているアメリカでは、この「他殺-自殺」を衝動的かつ簡単に行うことが可能で、何の罪もない多くの人が犠牲者となり深刻な社会問題になっています。


山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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