薬を大量に飲むことで人はすぐに死に至るものなのか
筆者(以下、山田):市川猿之助さんの両親のケースなど、近年、大量に薬を飲んで死亡するケースがありますが、薬を大量に飲むことで人はすぐに死に至るものなのでしょうか。
奥田教授:まず簡単に薬の効果の説明をする必要があります。薬の効き目のことは「薬効」と呼ばれます。薬の作用は、薬効が期待される血中濃度であれば効果的に体に働きますが、血中薬物濃度がそれ以上に高くなってしまったら、中毒の状態になったり、死亡したりします。薬効が期待される血中濃度の上限と下限の間を安全域と呼び、その上限を超えてしまった場合に閾値(いきち)を超えたといいます。安全域が広ければ、比較的安全な薬と言えますが、狭ければ中毒になりやすいと言えます。
ひと昔前の、例えば睡眠薬などは閾値の上限が低いため、ちょっと多めに飲むとすぐに中毒状態になってしまう傾向がありました。
ところが今の睡眠薬はより閾値の上限が高くなり、安全域が広くなったため使用しやすくなっています。いつもよりちょっと多量に飲んだくらいではそう簡単に中毒にならないように安全性が配慮されているはずですが、強い効果を求めてよりたくさんの薬を摂取するなど無謀な飲み方をしてしまうとさすがに中毒症状が出る、ということです。
複数の薬を飲むパターンもある?
山田:また、いろいろいろな種類の薬を飲むパターンもあるようです。
奥田教授:はい。いろいろな種類の薬を同時に飲む傾向もあり、薬同士が互いに作用を強めあう相加作用が起きます。また、薬の代謝が遅延したり、体内に残りやすくなります。多剤併用は中毒になりやすいです。
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