市販薬も危険なのか
山田:ただ市販薬の場合は、それほど薬は強くないという印象ですが。
奥田教授:市販の薬は基本的には安全性を考慮して、危険な薬、つまり安全域の狭い薬はないはずです。ただ、とんでもなくたくさん飲むと薬物の血中濃度が上がって閾値の上限を超え、中毒域に達してしまいます。
オーバードーズ(過剰摂取)による死とは
山田:オーバードーズ(過剰摂取)による死とは、どのように起きるのでしょうか。
奥田教授:オーバードーズ、すなわち過剰摂取の場合は、血中薬物濃度が中毒域を超えて致死的な濃度になってしまいます。薬そのものの副作用として、睡眠薬などでは脳幹の呼吸中枢が抑制されて呼吸が弱くなってしまう場合や、風邪薬などでは肝臓に障害が起きてしまう場合が考えられます。ただ死因究明を行っていると、実際にはそれら以外の理由で死亡するケースが多い印象があります。
よくあるのは、薬の飲み過ぎで意識がもうろうとしている中、嘔吐(おうと)した胃の内容物が気管に入ってしまい窒息死するケースです。専門的には「吐物吸引による窒息」と言います。また、睡眠剤などの場合は、飲み過ぎたことによってうつぶせ寝の状態で窒息死するケースがあります。
たまたま柔らかいくぼんだ枕でうつぶせに寝てしまった人などは、予期せず死亡してしまうことがあります。肥満体形の人も危険ですね。肥満体形の人がうつぶせに寝ると、深い眠りと肋骨や横隔膜の呼吸運動が制限されてしまうことが重なり窒息死します。他にも、長時間同じ姿勢で眠ってしまうことで血栓ができ、目が覚めて立ち上がったときに肺動脈の血管が詰まってしまう肺血栓塞栓症で亡くなる場合も少なくありません。