中華料理店を畳んでサラリーマンに転身した父
子どもたちにより良いサッカー環境を与えるために、地元で人気の繁盛店だった中華料理店を畳み、父・政人は千葉に居を移してサラリーマンに転身する。それは彼自身にとっても相当な人生の決断だったに違いない。「自分が結婚して、父親になったときも思いましたけど、こうして歳を重ねてあらためて『すごいな』って頭が下がります。28年前ってことは、ちょうど今の僕(41歳)と同じくらいの年齢ですからね。つまり、今の僕がサッカーとはまったく関係のない仕事に就いて、子どもたちのために住む場所も変えるってことですよね……たぶん、無理だな(苦笑)」
「少しでも良い環境でサッカーをさせてあげたい」その一心で
こうしてストーリーを紡いでいけば、あるいは“ステージパパ”の印象も受けるかもしれない。双子の兄弟をプロサッカー選手に育て上げるべく、脇目も振らず。そんなイメージだ。しかし、寿人はこう言って否定する。「僕たちが突き抜けてうまくて、小さな頃からプロになれる可能性があるって思えるような選手だったら、まだ分かりますよ。でも僕は、春日部市の選抜にも選ばれなかったし、埼玉県大会でもベスト16止まり。両親もプロになれるなんて、想像もしていなかったはずです。ただ、少しでも良い環境でサッカーをさせてあげたい、その一心だったんでしょう。中学校の部活動だと1年生は球拾いですからね。そういうことで1年間を無駄にしてほしくないと、環境の整ったクラブチームに進む道を用意してくれたんです」
子どものために、全てを犠牲にしてきたのではない。両親にとっては、子どもが夢中になれるものにどっぷりと浸かれる環境を与えてあげることが、無上の喜びであり、なによりの楽しみだったのだ。
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