世界を知れば日本が見える 第21回

BMW「アイス事件」、スラムダンクの映画も……中国のキャンセルカルチャーはなぜ起きるのか

中国でたびたび話題になる「キャンセルカルチャー」だが、過去にはどのような騒動があったのだろうか。中国のキャンセルカルチャーについてまとめたリポートを基に考察していく。

世界各国の大手企業もやられている

また同年には、フランスでも、仏銀行大手BNPパリバの弁護士が香港を支持するような投稿をしたことで、共産党機関紙が抗議してボイコットを呼びかける記事を掲載した。政府が主導した活動になった。
 

台湾や香港、ウイグル問題で中国に反発するような立場を表明したらまずアウトで、ボイコット運動を避けることはできないだろう。これまでさまざまな原因で、米スポーツ大手「ナイキ」と、スウェーデンの衣料品大手「H&M」、米ホテル大手「マリオット・インターナショナル」、米航空会社の「アメリカン航空」と「デルタ航空」、オーストリアのクリスタルメーカーである「スワロフスキー」、ドイツ自動車大手の「アウディ」や「メルセデス・ベンツ」もやられている。日本企業でも、スポーツ用品メーカーのアシックスや、食料品大手の大塚製薬が対象になったことがある。
 

さらに、冒頭のBMWのように、中国人差別につながるような動きも最近はよく目をつけられている。伊ファッションブランドのドルチェ&ガッバーナや、米ファッションブランドのコーチもボイコットの憂き目にあった。

ドルチェ&ガッバーナ

 

謝罪をしても逆効果の場合も

しかも対処法も難しい。謝罪しても簡単には鎮静化しないからだ。リポートによれば、「ターゲットになった企業の多くは、ボイコットを鎮静化させるために、すぐに謝罪をして、その後沈黙する。だがいくら謝罪しても、企業がさらなる反発にさらされるケースも少なくない。謝罪をしても中国の消費者に不誠実と見られたり、謝罪によってさらなる注目と批判を引き寄せることも多く、逆効果となる場合もある」と指摘する。
 

こうなってくると、海外企業が中国でビジネスをしたいなら、中国政府の言いなりになるしかないようだ。
 

日本では4月21日から、日本の保守政治家らが靖国神社を参拝しているが、これには抗議デモなどは起きていない。おそらく中国政府がウクライナ問題やG7広島サミットなどを前にして抗議をコントロールしているのかもしれない。また、もしかしたら、最近の中国人の怒りは政治的な話よりもビジネス面に向いているということなのかもしれない。
 

反スパイ法やデータセキュリティ法など、国民や外国人、企業などの活動を制限するような規制も強化している中国。中国市場でビジネスをするには、政府の規制を十分に気にしながら仕事をする必要がこれまで以上に高まっている。このカントリーリスクと世界はどう付き合っていくべきなのだろうか。
 

山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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