ここがヘンだよ、ニッポン企業 第13回

ジャニーズ事務所の「性加害報道」コメント、危機管理の視点で企業はお手本にできるのか

ジャニーズ事務所が発表した公式コメントが話題になっている。告発はもちろん事実関係への言及もなく「なんて誠意がない企業だ」とあきれる人も多いだろうが、実はこれは企業危機管理の世界では特に珍しくない。なぜかというと……。

大手マスコミも役所と同じ

大手マスコミも役所と同じで、国から保護されているので倒産リスクが少ない。だから、社会からどんなに叩かれても、木で鼻をくくった回答ができる。筆者も昔、某キー局のスキャンダルを取材した際、広報部から今回のジャニーズ事務所のような回答がペラッと送られてきた。納得いかないので電話で追加コメントを求めたが、「分かるでしょ? 何も言えないんですよ」とペーパーを再度棒読みされた。
 

こういう大手マスコミの1番の「取引先」がジャニーズ事務所だ。特にテレビは、ジャニーズアイドルという「インフラ」を断ち切られると、歌番組もドラマもバラエティも作れない。公共の電波を使うテレビ番組を支えるという意味では、ジャニーズ事務所はインフラ企業といってもいい。
 

だから、「ゼロ回答」が許される。マスコミも身内なので叩かない。今回のジャニー喜多川氏のスキャンダルははるか昔から週刊誌で報じられ裁判にもなっていたが、テレビや新聞全社が「スルー」し続けていたことからも分かるように、自分たちのビジネスにマイナスになることは報じない。それも「報道の自由」という解釈なのだ。
 

このように「ゼロ回答」は、一部の特権階級的な企業にだけ許された危機管理だ。くれぐれも「うちもジャニーズみたいなリリース出しときゃいいでしょ」なんて勘違いをしないようにお気を付けいただきたい。


窪田 順生 プロフィール
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。



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