ここがヘンだよ、ニッポン企業 第13回

ジャニーズ事務所の「性加害報道」コメント、危機管理の視点で企業はお手本にできるのか

ジャニーズ事務所が発表した公式コメントが話題になっている。告発はもちろん事実関係への言及もなく「なんて誠意がない企業だ」とあきれる人も多いだろうが、実はこれは企業危機管理の世界では特に珍しくない。なぜかというと……。

どのような組織なら「ゼロ回答」対応が認められているのか

そこで次に気になるのは、どのような組織がこのような「ゼロ回答」対応が認められているのか、ということだろうが、筆者の経験から言わせていただくと、「公的機関、もしくは公共サービスっぽい企業」は成功の確率が高い。
 

国会の官僚答弁が分かりやすいが、役所などが対外的に出すコメントというのは基本的に「ゼロ回答」だ。カチカチに「守り」で作られており、余計なことは何も言わない。愛想もリップサービスもゼロで、事前に作られたペーパーをそのまま読んで、相手が根負けして引き下がるまで壊れたラジオのように繰り返す。
 

役所が許されるワケ

「ゼロ回答」でも許される組織とは(画像はイメージ)

なぜそれが許されるのかというと、不誠実な対応で社会を敵に回しても組織が壊滅することがないからだ。民間企業ならば、不誠実な「ゼロ回答」で炎上をすれば、取引先や株主からクレームが入る。売り上げにも株価にも影響する。だから、社長も謝罪会見をして、場合によっては辞任に追い込まれる。だから、現場も必死で炎上しないギリギリの対応を模索する。
 

しかし、役所はその必要がない。市民に対応する窓口や、クレーム電話で怒鳴られて現場の下っ端のメンタルはすり減るが、国から出る予算が減るわけでもない。大臣や市長は選挙で選ばれるのでボロカスに叩かれて落選しようとも、現場の人々は公務員なので給料は変わらないのだ。
 

そういう役所っぽいカルチャーの残る半民半官的な企業は「ゼロ回答」をやりがちだ。分かりやすいのは、東京電力だ。今でこそ情報開示をするようになったが、原発事故前、スキャンダルが報じられてもジャニーズ事務所のコメントのようにその事実すら認めない「ゼロ回答」をしていたものだ。
 

JRや航空会社も

JRや航空会社などもだいぶマシになったが、かつてはジャニーズ事務所のように不都合な事実があることすら認めない「ゼロ回答」で突っぱねていて、今もそのような傾向は残っている。
 

このような話を聞くと、「ジャニーズ事務所は公共サービスじゃないだろ」と思うかもしれないが、テレビや新聞という国から優遇されるマスコミ企業と「身内」のような付き合いをしているという意味では、もはや公的サービスみたいなものではないか。
 

>次ページ:大手マスコミも役所と同じ

 

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