トヨタとマスコミによる「冷戦」
これを境に、トヨタの「マスコミ軽視」はさらに強くなる。例えば翌2021年夏に開催された東京五輪のときに、選手村でトヨタの自動運転車がパラ五輪の日本代表選手と接触事故を起こすということがあった。
本来、この手の事故は警察などとも連携をしている報道機関に真っ先に伝えるのが「常識」だが、トヨタはマスコミの記者団に対応する前に、「トヨタイムズ」に豊田社長が出演して、状況の説明と謝罪をした。この明らかにマスコミにけんかを売ったような対応に、一部のマスコミがかみ付いた。
『選手の出場機会を奪うという重大な事案にも関わらず、トヨタが事故を公表したのは翌日になってから。しかも、自社サイト「トヨタイムズ」で状況を説明した後に、豊田氏がマスコミの取材に応じただけで、正式な記者会見の場は設けていない』(2021年9月2日付 産経ニュース)
こんな「冷戦」が続く中で、ついに社長人事というマスコミが最も欲しがるニュースまで「冷遇」をした。これは完全に「三行半」ということではないのか。
ちょっと前、ある有名自動車ジャーナリストが、「トヨタが日本をあきらめつつある」という評論を発表して大きな話題になったが、実はそのあきらめているものの中には、「偏った報道を流し続けるマスコミ」が大きく占めているのかもしれない。
窪田順生プロフィール
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
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