「トヨタイムズ」が誕生したワケ
その象徴が、2019年正月にスタートした「トヨタイムズ」だ。当初からこのオウンドメディアは、マスコミの偏向報道を嫌っている豊田氏が、自分たちで正しい情報を発信ができるようになることを目的としたプロジェクトだといわれていた。
それがよく分かるのが、「トヨタの真実を取材で追求していく」というコンセプトだ。これはうがった見方をすれば、「既存マスコミはトヨタの真実を追求していない」という強烈な皮肉とも取れる。
そんな「豊田氏のマスコミ嫌い」に拍車を掛けたのが、新型コロナウイルスだったといわれている。2020年5月、先の見えない感染拡大で、日本中が不安に包まれていたとき、豊田氏は決算会見で、力強く「黒字死守」をアピールした。トヨタが弱気なことを言えば、日本の製造業も暗いムードに包まれて、経済も冷え込む。豊田氏はマスコミにも希望が持てるような報道を期待した。
しかし、マスコミ側の「思惑」は違った。当時、新型コロナウイルスによる死者が増えて医療崩壊で日本は阿鼻叫喚の地獄になると脅すようなことを言えば言うほど、ワイドショーの視聴率は上がり、新聞もよく売れる風潮があったのだ。
そうなると当然、トヨタの決算もネガティブに報じた方がコンテンツとして価値が上がる。その代表が、決算翌日の日本経済新聞の一面を飾った「トヨタの今期営業利益、8割減の5000億円 新型コロナで」という見出しだ。
>次ページ:トヨタとマスコミによる「冷戦」