ヒナタカの雑食系映画論 第12回

「予告詐欺」な映画とは? コナンやしんちゃん…良い意味で本編とギャップがある“歴史的な予告編”を考察

予告編と、映画本編の内容が乖離(かいり)している「予告詐欺」。その中にはネガティブな意味だけでない、良い意味でのギャップがポジティブな印象につながるものもあります。その例を紹介しましょう。※画像出典:(C)2015 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

予告編と、映画本編の内容が乖離(かいり)していると、「予告詐欺」と呼ばれてしまうこともままあります。しかし、中にはネガティブな意味だけでない、良い意味でのギャップがポジティブな印象につながることもあるのです。その例を紹介しましょう。
 

思っていたのと違うけどそれで良かった系

まずは「予告編で思っていた内容と違う!」とは思ったものの、その意外さがむしろ良かったと評判だった予告詐欺を紹介します。
 

■『ベイマックス』


日本の予告編ではハートフルストーリーのような印象がありますが(そうでもありますが)、 原題は『Big Hero 6』で、本編の内容はアメリカンコミックを原作としたバトルアクション映画! 心のケアをするロボットがヒーローチームの一員となり、悪に立ち向かう内容に驚いた人は多いものの、男の子が好きそうな内容を幅広い観客層に届けたこともあるためか、おおむね好意的に受け止められています。
 

■『ヴェノム』


予告編では「恐ろしい寄生生物が登場するヤバいSFホラー」な印象がありますが(そうでもありますが)、本編は『ど根性ガエル』のように、くっついて離れない凸凹コンビによるバディもの。素直な性格でごはん(人間含む)をいっぱい食べる寄生生物ヴェノムは、女性の観客からも「かわいい!」と大好評! 公式Twitterが「かわいい!」と言われることにぷんぷんしていることも、いとおしさを感じます。
 

■『花束みたいな恋をした』


菅田将暉と有村架純主演、幸せいっぱいのラブストーリーがつづられる……と思いきや(そうでもありますが)、本編は心えぐられそうになるほどの「すれ違い」を丁寧に紡いだ内容。主人公カップルは、ともに漫画やゲームなどのサブカルチャーのオタクで、好みが似ていたからこそ惹かれあったところもあるのですが…… 菅田将暉演じる“麦くん”が本屋で立ち読みしていた「ある本」に心が折れたオタクもいるのではないでしょうか。

また、大ヒット楽曲になったAwesome City Clubの『勿忘』は、あくまで本作の「インスパイアソング」であり、後述する「予告編で使われていた楽曲が本編(のエンディングでも)使われていない」例でもあります。
 

■『サバイバルファミリー』


予告はコメディー然とした印象がありますが(笑えるシーンももちろん本編にもありますが)、本編は、電気がなくなった世界を生き抜く家族の過酷なサバイバルを描いた、良い意味でギスギスした雰囲気に満ちた物語。だからこその感動も待ち受けている作品でした。

また、矢口史靖監督作では『ダンスウィズミー』の予告も、ミュージカル映画でありながら「女性2人のロードムービー」「トラウマと向き合う物語」になる本編とのギャップを感じる内容でした。


>次のページ:映画本編では予告編の音楽が使われていない系


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