ヒナタカの雑食系映画論 第8回

たしかに「新海誠っぽい」ポスターは増えたけど…『君の名は。』以降の青春SFアニメ映画の“現在地”

パッと見の印象で「『君の名は。』っぽい」「ジェネリック新海誠」と言われてしまうアニメ映画はなぜ生まれるのでしょうか。その理由を解説すると共に、「実際に観てみるとまったく違う魅力」あることも紹介しましょう。※画像出典:(C)2022 「僕愛」「君愛」製作委員会

新海誠というアニメ映画監督の名前は、「誰もが知っている」と言っても過言ではないでしょう。
 
(C)2016「君の名は。」製作委員会
(C)2016「君の名は。」製作委員会

2016年公開の『君の名は。』は歴史的超大ヒットを記録し、続く2019年の『天気の子』も大きな熱狂を持って迎えられました。その美麗(びれい)な画の数々、テンポ良く展開するエモーショナルな物語、耳に残るメロディアスな音楽で盛り上げる編集と演出、現代の若者にエールを送るメッセージ性など、支持を得た理由に全く異論はありません。
 

ジェネリック新海誠? 『君の名は。』以降に変化した「求められる企画」

新海誠監督は日本のアニメ映画の歴史を塗り替えた作家なのですが……当然というべきか、そのフォロワーとも言える、「一見すると」新海誠監督作品を連想するアニメ映画もその後に多く作られました。そこには、『君の名は。』の大ヒットのために「そのような企画が成立しやすくなった」背景も確実にあるのです。

例えば、2019年公開の『HELLO WORLD』のパンフレットでは、作り手が「『君の名は。』によってアニメ映画を取り巻く状況が変わってしまった」「社内で求められる企画の種類も変わってしまった」と明言していたりもするのですから。
 
(C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
(C)2019「HELLO WORLD」製作委員会

そうした作品群が、結果的に受け手に本編を観る前から「『君の名は。』っぽい」「ジェネリック新海誠」などと、軽んじる目線込みの比較で語られたり、そもそも観られないという例も決して少なくはないと思います。
 

「きれいな青空」と「少年少女が佇む」ビジュアルの既視感

「『君の名は。』っぽい」「ジェネリック新海誠」と思われてしまう理由は「少年少女が主人公の青春SF恋愛アニメ映画」というざっくりしたジャンル分けだけでなく、ポスターや公式サイトなどでの「パッと見のビジュアル」にもあるのではないでしょうか。

例えば、「きれいな青空」と「少年少女が佇む」画は、2022年9月下旬現在公開中の『夏へのトンネル、さよならの出口』、10月7日公開の『僕が愛したすべての君へ』でも共通しています。もちろん、それぞれとても丁寧に描かれた美しいビジュアルではあるのですが、良くも悪くも「どこかで見たような」印象を抱いた人もいるでしょう。
 
(C)2022 八目迷・小学館/映画「夏へのトンネル、さよならの出口」製作委員会
​​​​​(C)2022 八目迷・小学館/映画「夏へのトンネル、さよならの出口」製作委員会
 
(C)2022 「僕愛」「君愛」製作委員会
(C)2022 「僕愛」「君愛」製作委員会

しかしながら、SFへの多大な敬愛を捧げ、「この物語(セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る」というキャッチコピーもダテではなかった『HELLO WORLD』をはじめ、「実際に観ると新海誠監督作品とは全く違う魅力を打ち出しているじゃないか!」と思える作品も多くあります。そして、『夏へのトンネル、さよならの出口』と『僕が愛したすべての君へ』も、まさにそうだったのです。それぞれの魅力を簡潔に紹介してみましょう。


>(次のページ)『君の名は。』以降の青春SFアニメ映画、今までにない魅力とは?


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