平均年収は横ばいなのに、社会保険料の料率が上がっているワケ
日本年金機構の「社会保険料率の変遷」によれば、厚生年金保険(第一種)は2003年から上がり続けている。バブル崩壊以降、日本人の平均年収はほとんど横ばいで、むしろ減少に転じているにもかかわらずだ。
では、なぜ賃金の増加に比例しているはずの社会保険料の料率が、賃金を置き去りにして勝手に上がっていってしまっているのか。
答えはシンプルで、「医療費をたくさん使う高齢者の割合が増えている」からだ。
社会保障制度の基本は保険料による支え合いだ。現役世代が払った保険料で、高齢者や病人などの社会保障を支えていくことの繰り返しとなっている。このシステムは「人口は右肩上がりで増えていく」ということを前提としているので、日本のように少子高齢化になると簡単に「システムエラー」を起こしてしまう。
つまり、膨大な数の高齢者を、減少していく現役世代で支えなくてはいけないという「1人当たりの社会保障負担が重くなる」という問題が起きるのだ。
これに拍車を掛けるのが、「75歳以上の高齢者」の急増だ。2019年には1849万人だったが、2025年までに331万人も増えて2180万人となる見込みだ。
人間というものは年齢を重ねるほど手厚い医療が必要になることは言うまでもない。2018年、医療費に関する1人当たりの国庫負担は、65~74歳は8万円。しかし、これが75歳以上になると4倍に跳ね上がって32.8万円となっている。介護費の1人当たり国庫負担に関してはもっとひどい。65~74歳は1.3万円だったところ、なんと約10倍の12.8万円に膨れが上がるのだ。
こういう国庫に重い負担をかける「75歳以上の高齢者」が急速に増えていけば当然、日本の社会保障費も雪だるま式で増えていくことは容易に想像できよう。
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