海外では高品質な日本の「牛丼」
だが、海外はそうではない。「牛丼」は高品質な日本を代表する外国料理なので、現地でそれなりの価値を訴求できる。特に豚肉文化の多いアジアでは「牛丼」はかなりアドバンテージがある。タイのように経済成長著しい国の場合、日本国内事業よりも有望だ。
それがうかがえるのが、日本貿易振興機構(ジェトロ) 農林水産・食品部 農林水産・食品課が2016年3月に公表した「日本在住外国人による品目別日本食品評価調査 ー 品目別結果(畜産物)」である。
この中では、中国、タイ、アメリカ、イギリスの4カ国で「あなたが好きな日本産の畜産物について、好きなメニューを教えて下さい」というアンケートを行ったところ、すべての国で「牛丼」は、「ステーキ」「焼肉」に次いで人気となっている。
牛肉料理が定番のイギリスやアメリカならばこれは当然だが、注目すべきは中国とタイだ。これらの国では、「母国で代表的な畜産物のメニュー」を質問すると、「豚肉」が圧倒的となる。例えばガパオが有名なタイでは、「豚」と回答した人が42人だったのに対して、「牛」を答えたのは5人だけだった。これは中国も同様で、「豚肉」と回答したのは60人に対して、「牛肉」は21人だ。
つまり、アジアでは母国ではまだそれほど食べる習慣がないけれど、日本の「牛丼」は好きというワケだ。ここに大きなビジネスチャンスがあると考えるのは当然ではないか。
日本を代表する牛丼チェーン吉野家の海外展開を見ても、それは明らかだ。
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