「絶好の漁場」が使えなくなり、代わりに増えたのは……
伝統的なマルチ商法の勧誘は大学生をメインターゲットにしていた。地方から上京して1人暮らしをしている場合、友人も少ないため誰にも相談できずに入会や商品の購入をしてしまうケースが多いからだ。要するに、「いいカモ」なのだ。
しかし、コロナ禍で多くの大学がリモート授業に切り替わり、入学してからキャンパスに一度も行っていない学生も珍しくなくなった。つまり、コロナ禍の2年余りの間、マルチ商法の会員にとって「絶好の漁場」が使えなくなってしまったのである。
それがうかがえるのが消費生活相談センターに寄せられる苦情・相談件数だ。2015年から2019年まで5年連続で1万1000件を超えていたのだが、2020年には1万175件に減少。2021年には8767件まで落ち込んでいる。
では、大学のキャンパスでの勧誘が減った代わりに、どこで「カモ」を引っ掛けているのかというと、マッチングアプリと街頭での声がけだ。
例えば今、マッチングアプリでは出会った相手に対して、マルチ商法企業の名を明かさず誘い出して、会員に勧誘するという手口が多く報告され、問題になっている。その中には近年増えている「モノなしマルチ」の勧誘もある。「会員限定」という有望な投資先の情報が入ったUSBを高額で売りつけたり、「会員になれば必ず儲かる」をうたって仮想通貨の購入を迫ったりするようなものもあるという。
また、街頭での声がけも多い。駅前で若者にいきなり「いい居酒屋知りませんか?」などと声をかけて、一緒に飲もうなどと持ちかける。そこで、親しくなると「ビジネスで成功して儲けている」という人を紹介して、仲間にならないかと勧誘をするのだ。
ちなみに、この「街頭での声がけ」は「毎日新聞」など一部メディアが「最強のマルチ」と呼び普及キャンペーンを行っている「事業化集団」がよく用いていることが明らかになっている。
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