「安いニッポン」より給料の高い海外へ
かつて若者が短期間でガッツリ稼ごうと思ったら、工事の作業員や、高給で知られた佐川急便のドライバーなどだった。今の「安いニッポン」でそれを不眠不休でやったところで、たかが知れている。ならば給料の高い海外へ、というのは極めて自然な流れだろう。
「失われた30年」に入る前、日本がバブル景気に沸いていた頃、日本の高賃金を求めて、東南アジアや南米から多くの出稼ぎ外国人が来日したものだ。30年の衰退期を経て我々日本人も彼らと「同じ立場」になった、というだけの話なのだ。
ただ、それは裏を返せば、これからの「出稼ぎ日本人」は訪れた国で、低賃金労働や搾取、さらにパワハラやイジメなどの憂き目にあってしまう可能性が極めて高いということでもある。
なぜそんなことが言えるのか。日本にやってきている「出稼ぎ外国人」を見れば一目瞭然だ。
暴力やイジメ被害、人種差別も
厚生労働省が2020年に行った調査によれば、外国人の技能実習生が働いている8124事業所のうち5752事業所で労働基準法や労働安全衛生法違反が見つかったという。適切に働かせていたのは3割だけだった。
ルール違反どころか、暴力やイジメの被害も多数報告されている。岡山県の建設会社で働いていたベトナム人の技能実習生は、来日から2年に及んで、同僚から殴る蹴るなどの暴行を受けて、肋骨を3本折られた。
このような劣悪な労働環境が故、職場から逃げ出す外国人も多い。2021年に失踪した外国人の技能実習生は7000人を超えている。
>次ページ:日本人が欧米に出稼ぎをした場合に直面する問題