クスクスと笑い声が漏れたり、展開の驚きを共有できる劇場で見ると、さらに楽しめるでしょう。また、オフビートなコメディドラマに思えるところですが、後述する通り「別のジャンル」が顔を出すことにも注目です。
目玉は、主演の高橋一生が「絶対に怒らない男」にハマっていて愛おしくて仕方がないことと、NHK連続テレビ小説『まんぷく』の呉城久美が「触れるもの全て壊してしまう女」を熱演していること。そんな2人の「対決(?)」が大きな見どころになっていますし、さらに職場の同僚役の池脇千鶴との関係にも注目してほしいのです。具体的な魅力を記していきましょう。
高橋一生が体現するお人好しで天然な主人公の魅力
あらすじから紹介しましょう。主人公の夏野幹夫は「ただ機会がないだけ」でこれまで結婚をしていなかった独身の中年男性。パスポートの更新をしようと市役所に行った時、彼は住民票に身に覚えのない「続柄:妻」の文字を見つけます。自身と勝手に結婚した「繁子」のことが気になった幹夫は彼女を探し始め、小さな花屋でようやく見つけるのですが……。「なんで知らない人が勝手に自分と結婚しているの?」「どうやって?」という大きな疑問から始まる物語はミステリー的で先が気になりますし、その相手が見つかった時には躍動感のあるアクション(?)も展開します。
さらには、幹夫が「差し当たって離婚する必要もないですし」という理由で特に彼女を責めないどころか「許容」する、時には「詐欺によく遭う人?」とツッコまれるほどの主人公のおかしさがコメディにもなっているのです。
もはや引いてしまうレベルでお人好しで天然なキャラクターに高橋一生はベストマッチで、その演技力がいかんなく発揮されています。どこまでも温厚なことがはにかんだ笑顔から伝わってきますし、本気で戸惑う様もキュートなのですから。
特に注目してほしいのは、彼が時おり「鼻を2回こする」という仕草をしていること。どんな時にそのクセが出るのかを考えながら見てみると、その後の感動は、より増すのではないでしょうか。
呉城久美の「怒ることをむしろ望んでいる」ことに共感できる理由
さらに興味深いのは、幹夫とは正反対で怒ってばかりで、しかも「私のこと一番イヤなのは私だよ!」などと自己卑下をしながらも、彼に「怒ることをむしろ望んでいる」繁子の心境です。
なるほど、「怒りという感情は愛情の裏返し」でもある、というのは多くの人が共感できるものでしょう。ともすれば、繁子は彼に本気の愛情を求めているということですし、彼女の感情の強さが幹夫の心を揺れ動かして、いつか本当に怒ってしまうのでは(それこそが愛情なのかも)? とハラハラする様は、もはやジャンルがサスペンスに転換したかのようでした。「怒るべきことで怒らないってことは、相手のことどうでもいいってことだから、どうでもいいってことになるんだよ」
さらに、繁子が幹夫にお金を借りて、その金額から幹夫が目的を推理して、さらに「尾行」をしたりする様からは、「2人は考え方や価値観も似ているし、お似合いじゃないかな?」と思えたりもするのです。そのような関係の変化と、その後の「まさか」の帰結も楽しんでほしいです。



