「猫って、こんな生き物だったのか——」
保護された1匹の黒猫を迎えた翌日、猫に興味のなかったお父さんの心は、あっけないほどとろけていました。膝によじ登り、体をすり寄せ、喉を鳴らす小さな命……。犬派のお父さんを“猫沼”へと導いた奇跡の黒猫とは?
本記事では、『猫は奇跡』(佐竹茉莉子・著/辰巳出版)より一部抜粋し、黒猫・百(もも)が家族にもたらした変化と、猫が人の人生にそっと入り込む瞬間を紹介します。
猫に興味のないお父さんを一夜でとろけさせた黒猫
家の新築をきっかけに、妻が「猫を飼いたい」と言い出した。
「え、猫?」と犬派の夫は思ったが、知人の保護した黒い子猫を迎えることになった。
子猫が足元から膝によじ登ってきてスリスリしたのは、やってきた翌日のこと。
瞬時に夫の心はとろけにとろけた。
「ああ、これが猫の『スリスリ』というものか。なんて可愛い生き物なんだ」
やってきた子猫はすぐになついた
一也(かずや)さんは根っからの犬派だった。猫にはまるきり興味がなく、触った記憶もない。妻の茜さんが、「猫を飼う」と言い出したときは、「猫か」と思ったが、反対もしなかった。
茜さんは、実家でずっと猫と暮らしていたから、家の新築をきっかけに、また猫と暮らしたいと思っていた。保護活動の手伝いを始めた大学の先輩夫妻から「黒猫に興味ある?」と打診されるやすぐに見に行った。
金色の目をしたちび猫には「うなぎくん」という仮の名がついていた。
2日後に譲渡会に出ると聞いた茜さんは、会場へのぞきに行った。うなぎくんは無愛想を通し、誰からも声がかからなかったことを譲渡会終了後に聞き、「うちにくる子だわ」と思った。
もらい受けてきた猫に興味がない夫の様子を見て、茜さんは「命名権をあげる」と引き込み作戦に出た。
一也さんは思いついて「もも」と答えた。それで、子猫は「百(もも)」という名になった。
百は、最初の日こそ、冷蔵庫と壁の隙間に隠れていたが、翌日にはオモチャにつられ、ふたりの前で無邪気に遊び始めた。
そのうち、一也さんの足元から、ズボンに小さな可愛い爪を立ててよじ登り、膝の上に乗ると、体をスリスリとこすりつけてきた。瞬時に一也さんの心はとろけた。「これが猫の『スリスリ』というものか。なんて可愛いんだ。猫って……こんなだったのか」
なんという小ささ。なんというやわらかさ。なんという無防備さ。百は、膝の上でくつろぎ、ゴロゴロゴロと小さく喉を鳴らし始めるではないか。「ああ、なんて可愛いんだ! どうしてもっと早く教えてくれなかったんだ」



