両親の愛情を一身に受け、いろんな意味で肥え太り、身も心も“ジャイアン”のようにたくましく成長していきました。特に、メイと仲良くしたい「お父さん」に無慈悲なパンチを浴びせる姿はSNSで人気を集め、2025年8月には単独写真集『メイ先輩』が刊行されました。
残念ながら、メイは写真集の制作のさなかに急逝。突然リングから立ち去ったハードパンチャー・メイの思い出をMARCOさんとお父さんに振り返ってもらいました。
愛されて育った“ジャイアン”
——写真集『メイ先輩』には、メイのさまざまな表情が収められています。穏やかな表情や瞳をキュルキュルさせた写真は新鮮でしたが、やっぱり、メイといえば暴君キャラが印象的です。いつからこの性格なのでしょうか?MARCO:子猫の頃から気が強かったです。猫じゃらしで遊んでいたら、突然手を攻撃してきてびっくりしました。大人になってからは「ただ視界に入った」というだけで、同居犬猫たちを襲っています。体型はすっかり丸くなりましたが、性格はずっと変わりません(笑)。
——ほかの猫が気に入っている「箱」を強奪する様子が、写真集にも収められていますね。
MARCO:同居のオス猫たちは、「いつかメイに勝ちたい」という野望を抱いてメイに挑むことがありますが、毎回コテンパンにされていました。実家には犬もいるのですが、先代のラブラドールも、今いるブルドッグも、メイの猫パンチの洗礼を受けてからは、警戒しているようでした。
——メイが一目を置いている相手はいますか?
MARCO:気の強い小柄なメス猫「おもち」に対しては、まるで小学生男子のようにしつこくしていて、きっと好きなんだろうなと思っていました(笑)。
メイは人間に対しても相手によって態度を変えていて、私には攻撃的ですが、母には心を許しており、ブラッシングや爪切りができるのは母だけです。おやつがほしい時は高音ボイスで甘えます。
ただし、母でも抱っこの限界は30秒。制限時間を超過したときの鬼の形相は、写真集『メイ先輩』の表紙にもなっています。
父とメイの「光速パンチ」攻防戦
——メイといえば「お父さんとの攻防」です。ファンにはおなじみのシーンですが、状況を教えてください。MARCO:ひな型としては、父がテーブルに新聞や地図を広げていると、おもむろにメイがやってきて、その上にわがままボディを横たえます。
その誘惑に耐えかねて、父がメイに触れようとすると、光の速さで右ストレートが飛んでくる。顔面にパンチを受けた父がオーバーリアクションで悶える……ここまでがワンセットです。
この様子はSNSでも人気が高く、写真集にも何点か収録しています。数が多いので選ぶのが大変でしたが、パンチの勢いで父のメガネが傾いている写真を採用しました。
MARCO:怒っていないと思います。あれだけひっくり返っておなかを出して「触れ」「遊べ」と誘っているのですから。むしろ、構ってほしいのだと思います。父のことは遊び相手だと思っているようで、何をしても怒らない相手だと完全に信じています。
時々イラッとしていることはあるかもしれませんが(笑)。
——お父さんにもお尋ねします。メイはどんな猫でしたか?
お父さん:メイは皆が恐れるハードパンチャーです。ふいに動き出すやいなや、家の中をリングに変え、華麗なフットワークで鋭いパンチを繰り出します。顔面めがけて左ジャブ、そして右ストレート。20kgのブルドッグも猫たちも、そして私も、そのコンビネーションに何度となく翻弄されました。
でも、不思議と腹は立ちません。見事過ぎて、もう笑うしかなかったから。静から動へ、一瞬で切り替わるあの気迫。何事もなかったかのように、スッと背を向けて去っていく、その背中。まるで映画のワンシーンのようでした。
今でもふと思い出しては、思わず笑ってしまいます。あのパンチも、ステップも、全てがメイらしかったです。
お父さん:親分と子分、上司と部下。もちろん上に立つのは、メイ。猫と暮らす思いは人それぞれですが、関係というのは理屈ではなく、自然と形づくられていくものだと思っています。
メイの自由気ままな生き方を、できるだけそのまま受けとめ、こちらも無理せず、背伸びせず。互いのペースで並走できていたのではないでしょうか。よき主従関係……いえ、よきパートナーだったと思っています。
——すてきな関係です。お父さんがメイを抱っこしたり、なでくりまわすこともあるのですか?
MARCO:もちろん、メイがそんなことを許すはずもありません(笑)。父は基本的に抱っこもせず、しつこく構うこともありません。猫はただそこにいるだけでいい、という考えのようで、時々そっとなでる程度です。
ちなみに、「静岡」という猫は、父のことが大好きです。でも父の方は、時々ポンポンとなでる程度。あくまで自然体な関係です。
——メイが膝にのってくることは?
お父さん:ありません。
SNSでの大反響と、猫が持つ力
——2021年にMARCOさんがX(旧Twitter)を開設してから、あれよあれよとメイとお父さんの写真がバズりました。どんな心境でしたか?MARCO:最初は少し怖かったです。自分の投稿がどんどん遠くへ行ってしまうような感覚でした。でも結果的に多くの方に楽しんでいただけて、よかったと思います。 ——ファンからはどんな声が寄せられますか?
MARCO:写真展の会場で、ある男性が「お父さんの姿が、自分そのものなのです。ぜひご本人によろしくお伝えください」と声をかけてくださったのがとても印象に残っています。思い通りにならない猫だからこそ、共感してくださる方も多いのかもしれません。
ほかにも、「私ももっと自由でいいのですね」「自分にもう少し素直に生きていきたい」といった感想も多くいただきました。
人間関係に悩み、効率や成果ばかりが求められる社会の中で、猫は「そのままでいい」と、そっと背中を押してくれる気がします。その小さな存在が、日々の心の支えになっている人も多いのだと思います。
メイを通して、改めてそう感じています。
お父さん:まいったなぁ(笑)。
MARCO:喜んでます(笑)。
——最後に、お父さんからファンの皆さんへメッセージをお願いします。
五月に生まれたメイ。何ものにもとらわれず、恐れを知らぬまなざしで、真っすぐに駆け抜けた、あの子の毎日。そして、ふとした瞬間に見せる穏やかな表情——その一つひとつが、写真の中に今も鮮やかに息づいています。
写真集のページをめくるたびに懐かしさが胸に満ち、こうして一冊にまとめていただけたことに、心より感謝しています。
うれしい時も、さみしい時も、心通わすネコ友へ——感謝の気持ちを込めて。いつかどこかでお会いできる日を。 この写真集の著者:MARCO プロフィール
会社員。2014年より写真家・岡田邦明氏に師事。2016年岩合光昭さんが選んだアサヒカメラ第3回ネコ写真コンテスト入選、2021年日本写真絵本大賞審査員特別賞受賞。2016年、18年に横浜赤レンガ倉庫ねこ写真展に出展、2020年、21年に富士フイルムフォトサロン東京・札幌にて個展開催。
Instagram:marco77774
X:@marco7444



