早く家に帰りたい!
一也さんは、会社からの帰宅や休日がとても楽しみになった。
帰宅すると、まずは、こたつ布団の上で百を仰向けにする。じっと見つめるつぶらな目や、ほわほわのお腹の毛が何とも可愛い。前脚を握って、「東京音頭」なんぞを歌に合わせて踊らせてみるが、ゴロゴロと喉を鳴らして付き合ってくれる百が愛しくてたまらない。
百が夫妻の寵愛を浴びるひとり息子になって1年ちょっと過ぎたある日、敷地内の駐車スペースに、目がぐじゅぐじゅの白っぽい子猫がいる。母猫とはぐれたのか、鳴き続けて枯らしてしまったような声で鳴く。
衰弱しているようなので、茜さんたちは保護を決めた。体調が落ち着いたら譲渡しようと、SNSで知り合いなどに発信して貰い手を探し始めた茜さんに、一也さんが言うではないか。
「名前は『まる』にした」
ツンもデレも、たまらない
2匹目の猫は「円(まる)」になった。2匹はすぐに仲良くなり、じゃれ合い走り回って家の中はにぎやかになった。仲のよい様子を眺める楽しみも増えた。
かまいすぎる一也さんに円はつれない。「いやもう、猫だったら、ツン(円)でもデレ(百)でも、たまらなく可愛いです!」と一也さんは目尻を下げる。
「ゴロゴロやスリスリは人生を変えました。いつでも一緒にいたいと思うし、猫の喜ぶことならなんでもしてあげたい」
かたわらで、茜さんも笑う。
「猫沼にずぶずぶハマっていく夫を見ているのもおかしくて楽しくて」
茜さんは、円のように助けを求めている子がまたやってきたら、百と円に相談の上で迎え、「玉」という名前にしようと決めている。夫はすぐに陥落するだろうから。
猫のいる風景は、自分たち夫婦のこれからの人生を愉しく平和に彩り、新しい発見をたくさんさせてくれるだろうから。
この書籍の著者:佐竹茉莉子 プロフィール
フリーランスのライター。幼児期から猫はいつもそばに。2007年より、町々で出会った猫を、寄り添う人々や町の情景と共に自己流で撮り始める。フェリシモ「猫部」のWEBサイト創設時からのブログ『道ばた猫日記』は連載15年目。朝日新聞系ペット情報サイトsippo の連載『猫のいる風景』はYahooニュースなどでも度々取り上げられ、反響を呼ぶ。季刊の猫専門誌『猫びより』(辰巳出版)や女性誌での取材記事は、温かい目線に定評がある。



