終活を意識し始めたとき、愛犬家は「自分亡きあと、飼い犬はどうなるか」と頭を悩ませるものではないでしょうか。できれば犬には幸せな一生を送ってほしいものです。
『私が死んだあとも愛する犬を守る本』(日東書院本社)では、愛犬を託せる人が見つかった場合、飼育費用としていくら準備すべきか、また、頼れる人がいない場合の預け先はどこが良いかを紹介しています。今回は、本書からその一部を抜粋。
11月1日は「わん(1)わん(1)わん(1)」で、犬の日。この機会に、もしもの時に愛犬が困らないよう、飼い主として準備しておくべき「終生費用」について考えてみましょう。
愛犬にいくら残せばいい?
愛犬を託せる人が見つかったら、その人に犬の飼育費用を渡す必要があります。善意で愛犬を世話してくれる人に飼育費用まで甘えるわけにはいきません。その人の家計を圧迫するわけにはいきませんし、そんな条件で犬を引き受けてくれる人を探すのは難しいことです。
とはいえ、いくらくらい渡すのが妥当なのでしょうか。
ペット保険のアニコム損保による調査(2024年)では、犬1匹にかかる1年間の飼育費は平均で41万円ほどだそうです。ひと月に3万5000円ほどです。
また、一般社団法人ペットフード協会の調査(2024年)によると、犬1匹にかかるひと月の飼育費は平均1万5000円ほど、犬1匹を最期まで面倒見たときの総額は平均で271万1875円となっています。
これらはあくまで参考値ですが、あなたの場合はどれくらいでしょうか。犬にかかる費用などアバウトにしか把握していない人もいるかもしれません。その場合、試しにひと月だけ、実費の合計を計算してみてはどうでしょう。
仮にひと月2万円かかっていたとして、犬の平均寿命が15歳弱。いま仮に犬が5歳だとすると、あと10年弱生きる計算になります。すると、2万円×12カ月×10年で240万円。15歳を超えて長生きするかもしれませんし、ふつう高齢になるほど医療費がかさむものなので、長生きしたとしても不自由ないだけの金額を残すとすると、300万円ほどは用意しておきたいところです。
こうして俯瞰してみると、ペットの飼育にはやはりそれなりのお金がかかるものです。そのためにも、ふだんからある程度まとまった貯えはしておきたいものです。
老犬ホームの費用は150万円以上
ちなみに愛犬を老犬ホームに入れるためには150万円以上かかるところがほとんどです。看護・介護が必要な犬ほど費用が高く、要介護の度合いによって入居費用を変えている施設もあります。
また小型犬より大型犬のほうが費用が高く設定されているところがほとんど。飼育スペースも介護の手間も大型犬ほど多くかかるからです。
介護が必要な大型犬だと入居費用が300万円以上になることもあります。高額に思えますが、ふつうに飼っていても数百万円かかるのですから、場所代等を考えると決して高い金額ではないのですね。
ちなみに便宜的に「老犬ホーム」と言っていますが、こうした施設は高齢犬でないと入居できないわけではなく、若い犬でも入れます。
ただし若いほど残りのお世話期間が長くなりますから、費用もそのぶん高く設定しているところがほとんど。一括払いではなく一年単位、数ヶ月単位で費用を設定しているところもあります。
その一方、なかには数万円で引き取るという愛護団体もあります。愛護団体は支援者から寄付金を募るためある程度補えるとはいえ、破格の値段です。
平均的な生活なら数ヶ月で使い切ってしまう金額で一生涯面倒を見てくれるというのですから。ただ、こういう安価なところこそよく調べるべきでしょう。安かろう悪かろうでは愛犬が苦しみます。
よく調べたうえで、あなたがその施設の方針に納得できるのならそういうところに任せてもよいと思います。重要なのはあなたが納得できること、そして愛犬が辛い目に遭わずに済むこと。安心して任せられる施設のチェック項目はのちほどお伝えします。
数百万円から数万円まで、犬にかかる費用も本当にピンキリです。どんな場所で過ごしてほしいか、具合が悪くなったときにどの程度の医療を受けさせたいか。
最高ランクを望むか最低限の動物福祉が守れる程度でよいのか中程度がいいのか。犬を任せる相手を選ぶにはそこから考える必要があります。



