東京都葛飾区の京成押上線・京成立石駅の周辺は、23区東側の下町風景が今なお残るエリアです。歴史をたどると、古墳時代にはすでに人の居住があったとされ、「立石」という地名は平安時代の古代東海道標と考えられる奇岩「立石様」(現在は東京都指定史跡)に由来しているのだとか。
立石といえば、昔ながらの「せんべろ」居酒屋が密集する“呑んべえの聖地”。しかし近年は再開発計画が進み、駅北側の風景が大きく変わりつつあります。現在の立石がどのような姿になっているのか、実際に歩いてみました。
北口の「元」呑んべ横丁の現在
立石駅は、北側も南側もロータリーや広場がなく、古くからの建物が密集していたのが特徴です。現在、北口駅前はほとんどの建物が解体され、フェンスで囲われた状態になっています。
かつては超ディープスポットとして知られた「呑んべ横丁」などもありましたが、現在は跡形もなくなり、往時の喧騒(けんそう)を思い出すことも難しい状況です。
新しい立石駅舎のデザインも公開されており、シンプルでスタイリッシュな印象です。このデザインが地域に溶け込み、再び人が集う場所となるかは今後次第といえそうです。
また、工事フェンスでは『キャプテン翼』が大きく描かれ、訪れる人々の目を引きます。
『キャプテン翼』の原作者・高橋陽一先生は葛飾区四ツ木の出身。隣駅の四ツ木駅は“キャプ翼の聖地”として知られていますが、葛飾区全体で作品にちなんだ街おこしやイベントを展開しています。
再開発後はタワーマンションや葛飾区の新庁舎が建設される予定です。以前の立石は細い街路と木造家屋が密集し、地震や火災時の被害が懸念されていた地域でした。
そのため防災の観点からも更新は重要ですが、資材高騰や人手不足で再開発が難航する事例も多い昨今。新しい立石が、住民と共に歩む街として再生できるかは今後の課題です。
ただし、北口の商店がすべて姿を消したわけではありません。フェンスを抜けた先には、今も昔ながらの下町の風景がわずかに残っています。
かつて呑んべ横丁にあった寿司店「江戸安」などは近隣に移転し、営業を続けています。街が変わっても、地元で生き続けたいという人々の強い思いが息づいています。



